糸島新聞
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まち角

2019.04.11

 太平洋戦争末期、米軍の沖縄攻撃に抗した、日本軍の特攻攻撃「菊水作戦」は、両軍で8千近い若い命と、その未来と夢を奪った。米国生まれの日系二世、松藤大治(おおじ)少尉=当時23歳=もその一人▼大治は1921(大正10)年に、父松藤岩雄(一貴山村出身)と母ヨシノの間にカリフォルニア州サクラメントで生まれ、少年時代を日本人街で伸び伸びと過ごした。しかし、29年の大恐慌以降、米国人による日本人への差別は日増しに強まる▼36年の夏、15歳の大治は日本で学ぶことを決意。両親の故郷である糸島に単身船で向かう。怡土村井田の母の実家に身を寄せ、難関の糸島中学転入試験を突破。文武に励み、剣道では大将を担う▼さらに、「外交官になって日米の懸け橋になりたい」と猛勉強。東京商科大予科(現・一橋大)に入学し、夢に一歩一歩近づいていた。東京からの帰省先は、父の妹ともの嫁ぎ先、一貴山波呂の浦家▼米国籍も持つ大治は、兵役拒否もできたが、日系人収容所の両親に「息子が立派な日本人であること」を示すため、学徒出陣に応じ特攻隊にも志願する。45(昭和20)年4月6日、23歳の大治が乗ったゼロ戦は、鹿児島の鹿屋基地から沖縄の海に向かった▼その生涯は、門田隆将著『蒼海(そうかい)に消ゆ』に詳しい。糸島にルーツを持ち、糸島で学び育った日系二世の若者が、祖国のためにもう一つの祖国に特攻せざるを得なかった。あれから74年。決して、忘れてはいけない物語がある。

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