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まち角
2020.07.3
「ふるさとの訛りなつかし停車場の 人ごみの中にそを聞きに行く」。1910(明治43)年発行の「一握の砂」に収められた石川啄木の歌。「石をもて追わるるごとく」去った故郷だが、その訛りを愛した▼岩手県は、南北に旧南部藩と旧伊達藩に分かれ、海手、山手でも風習や言葉が違う。「うざねはいで=苦労して」「わたわったど=一生懸命」「ちょすな=触るな」などのお国言葉は、啄木の耳に届いただろうか▼糸島の言葉も、前原地区は博多、二丈地区は唐津の影響を受け、海が近い志摩地区ではまた違う趣がある。このほど、その方言たちを「糸島の方言」としてまとめた▼約3200語を収録したが、「そげな言い方はしたこつがなか」「ばあさんあたりは、使いよったばって、私たちゃ使わん」などの感想も寄せられる。ひとくくりにできない糸島の多様性を改めて感じている▼いくつか紹介する。まずは上級編、「あぎたぶら」「おかまおこす」「ちんずん」、それぞれ 「饒舌(じょうぜつ)」「つきがまわってくる」「粉々」。中級編は、「しきらん」「ぶすくれる」で、「できない」「すねる」▼頁ごとにその情景が浮かぶ。母が、父がまだ若く、自分が幼かった「あの頃」が懐かしい。404頁、税別2000円。糸島地区の書店、西日本新聞の販売店、糸島新聞社でお求めになれます。なんかなし、手に取っちゃらんですな。