糸島新聞
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まち角

2020.10.16

「あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば伝えてよ ―男ありて 今日の夕餉(ゆふげ)にひとりさんまを食(くら)ひて思いにふける  
 と」(秋刀魚の歌)。「妻にそむかれた男」佐藤春夫は、「人に捨てられんとする人妻」谷崎潤一郎の妻千代への切ない思いを、「さんま」を10回も登場させ描いた▼そのサンマが高い。糸島のある店では、税込みで北海道産の生二尾538円。その近くの店では、同じく一尾380円▼サンマの不漁が高値の原因。潮流や海水温の変化、同じ餌のマイワシの増加などが理由に挙がる。日本食ブームもありサンマ漁に台湾・中国・韓国などが加わったからともいうが真偽は定かではない。一方、同じ店で訳アリ塩の冷凍が、一尾50円で木箱に詰まっていた▼脂の乗ったサンマの身もさることながら、苦みを帯びた内臓の美味しさと言ったら、別次元の味覚。熱々のサンマに、佐藤春夫をならい、カボスの酸(す)をしたたらせ口に含み、冷えたビールを流し込むと、目もくらむほどの極楽浄土が現れる▼フォークシンガー斎藤哲夫は「さんま焼けたか」で、下町に住む恋人を夕暮れに訪ね、「三味(しゃみ)の音(ね) 風に柳ゆれ 姐さんこれからどちらまで 中略 さんま焼けたか、粋な親父の声がする」と歌った。秋刀魚は、詩人の恋心を刺激する何かも内蔵しているのか。「さんま、さんま さんま苦いか塩つぱいか」。どうぞ、塩焼きで。

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