糸島新聞
1917(大正6)年創刊

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まち角

2021.03.5

前職時代のこと。東京から福岡に帰るはずの午後に襲われた揺れは、電柱にしがみつくほどのものだった。ビルから落ちたガラス片が散乱する歩道を、会議開催予定の東新橋の電通ビルに向かった▼エレベーターは全機停止。1階ロビーで会議の中止が決まる。旧知の電通社員が26階の職場へ階段で向かう前に残した「気をつけてお帰りください」が、妙にリアルだった▼通常、タクシーで10分程の道を1時間歩いて八重洲の支社に戻る。携帯も固定電話も不通。本社の全部員とご家族の無事を確認するのに4時間、高田馬場から歩いて戻った部員のそれには6時間が必要で、支社に泊まる▼深夜、支社の社員たちと周辺パトロールに出る。コンビニの水や食品は売り切れ、棚には小袋のドレッシングだけが残る。地下街には、座り込む多くの人がいた▼日本橋三越は、店内の帰宅難民に、照明と暖房をつけて朝まで保護した。同店のY氏は、「店内の人は全て三越のお客様です。お客様を守るのは当然です」。八重洲富士屋ホテルでは、ポットの熱いお茶と宴会場に並べた椅子を帰宅難民に供した。F嬢は「当ホテルを頼る人を寒空に追い出せません」▼あれから10年。被災地を訪ねる度に、報道に触れる度に、「忘れてはいけない」と誓うが、「過去のこと」になる日常がある。あの日、あの夜を、片時も忘れられない人たちを、忘れてはならない。

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