糸島新聞
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まち角

2021.06.18

眩いばかりの海と空、沖縄首里城の北、遠く慶良間や久米の島々を臨む豊かな松林は、かつて首里八景と称されたが、米軍によって首里城と共に焼失した▼戦後、占領軍はそこに「ニシムイ美術村」を作る。のちに沖縄画壇を代表する誇り高き若き画家たちが住居兼のアトリエで、米軍相手の肖像画や風景画などの「売り絵」で生計を立てつつ、それぞれの創作に挑んだ▼作家原田マハは、その史実を基に「太陽の棘」を書いた。共に絵を愛する占領軍の若き軍医と沖縄の画家たちの芸術と友情の日々。作中原田は、激戦地摩文仁(まぶに)出身の画家ヒガに、失われた故郷を描いた抽象画の前で、米軍医に対し「これは、摩文仁の風景だ。俺の故郷だ。てめえらが、日本人(やまと)が、めちゃくちゃにしやがった場所だ」と、くぐもった声で言わせる▼今は、平和な畑や漁港や海水浴場としてある小富士や船越・深江などには、戦争中に軍事基地があった。多くの若者が訓練に明け暮れ、出撃し、戻ることなく戦争は終わった▼糸島は、米軍に占領されなかった。それは、単なる偶然なのかもしれない。沖縄を思う時そんな気持ちがよぎる▼原田は、美しい沖縄が舞台の恋愛小説「カフーを待ちわびて」でデビュー。いつか、美しさだけではない、そこに横たわる歴史も書かなければと、8年後にやっと「太陽の棘」を描いた。巻末の膨大な参考文献でその時間を知る。

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