ニュース
News List
まち角
2021.12.10
筑前前原駅前から北へ、海に向かい初交差点を過ぎた右手、志摩吉田のビニールハウス。北九州市小倉出身の磯貝満一さん(52)が、「土」の力を宿す野菜たちを育てている▼店舗建築などの会社を営んでいたが、若い頃からの夢「いつかは農業をやる」はあきらめなかった。とはいえ、20年ほど前の新規就農の壁は高く、40代になって、やっと糸島の畑と出会えた。今は、2㌶の露地やハウスで「栽培中農薬不使用」の野菜が育つ▼「『土』を大事にする農業をしていきたい」と磯貝さん。骨は折れるが、畑に米ぬかやモミガラ、たい肥などを漉き込むと、土中の良性微生物が増えていく。全てが思い通りにはならないが、いい菌が悪い菌を追い払い、年ごとに畑が元気になっていく▼就農当初と比べると、見違えるほど土が柔らかく水はけがよくなった。その畑では、土の力が作物に伝わり、病虫害に強く、香りも味も食感も格段にいい野菜が育ってくれる▼「美味しかった」と言われるのはもちろん嬉しいが、「野菜を食べられなかった夫や子供が食べてくれた」と聞くと、心底この仕事を大切にしてよかったと、思うそうだ▼若い頃、サーフィンのために小倉から度々糸島を訪れた。ここで農業を始め「畑仕事の合間に波に乗る」というイメージを鮮明に結べたが、畑が忙しくて実現できていない。いつの日かの楽しみと、大事にとっている。