糸島新聞
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まち角

2022.02.11

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色盛者必衰の理(ことわり)をあらはす。平家物語の冒頭、中学校の授業でそらんじた人は多いのだろう▼沙羅双樹はインド生まれの背が高い常緑樹。お釈迦様が亡くなった2月15日を描いた「涅槃(ねはん)図」にある。涅槃とは、悟りに到達した境地▼15日は宗派を超え、お寺で涅槃図が公開され、お釈迦様をしのぶ。二丈波呂の龍国寺本堂にも涅槃図がかけられている。二百年以上前、江戸時代の作。天井に届かんばかりの大涅槃図は、時を超え繊細な筆致を鮮やかに保つ(15日まで、くれぐれも密にはご用心)▼沙羅双樹に囲まれ横たわるお釈迦様のはるか天上には満月、生母さまが天女たちを従え息子の許に向かう。傍らでは、多くの弟子たちが嘆き悲しむ。菩薩や鬼、さらには牛や馬、象、孔雀、龍などあらゆる生き物たちがひざまずく。ナメクジやヒルなど、人から嫌われる生き物たちも嘆いているように見える▼間違っていたら教えを乞いたいが、おそらくお釈迦様の死の様子=涅槃図には、全ての命が大切だ。死を前にして命は同等の価値を持つ、あるいは無だ。などなどの寓意が込められているのだろう▼川のせせらぎと風の音、はるか遠くに車の排気音を聞く、寒さ厳しき本堂。その本堂の涅槃図の前に、うすらぼんやり座っていると、煩悩の塊のような私でさえ、心と体が整っていくような気がしてくる。

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