糸島新聞
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まち角

2022.02.18

 「志賀のあまの 塩やく煙風をいたみ 立ちは昇らず山にたなびく」志賀島の塩づくりの煙は、風が強くて立ち昇らない(万葉集)。それから千四百年、同じ海で昔ながらの手作業で塩をつくる「またいちの塩」の平川秀一さん▼福岡市早良区出身。建築を学び、ログハウスの勉強で単身カナダへ渡るが、食の世界に導かれる。スウェーデンなどを経て日本に戻り、ホテルや料亭で板前修業▼そんな時、国の専売だった塩が自由化され、多彩な「塩」が出回りだした。塩で素材の味が大きく変わる、醸し出される塩辛さ以外の豊かな味を体感し、驚き、ついには塩作りに挑む▼母方の祖母は、波多江の波多江さん。子供の頃、幾度も父親と福の浦で魚を突いて獲った。2000年、その福の浦に天然塩の工房を構える、26歳だった。ただ、その良さは判ってもらえず、数年は、昼は塩をつくり、夜は飲食店で働いた▼福岡の海は北にあり、塩作りに適した南の海は限られる。工房の南では澄んだ外海と滋養豊かな内海がぶつかりあう。冒頭の万葉歌碑が建つ志賀島の浜も南が海だ▼三人の子を育てる平川さん。ちゃんとした素材を、ちゃんと料理して食べれば、ちゃんとした舌と体が育つ。そのふたつがあればどんなに困難な世の中でも生きていけると信じる。昨年、塩の容器をプラスチックから紙に変え、前原に塩そば屋を開けた。頼れるスタッフたちと、塩を核にした明日を見つめる。

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