糸島新聞
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続・糸島伝説集28

2022.06.3

火伏地蔵と尾頭(おとう)の猫塚(上)

 時代ははっきり分からないが、昔、前原の茶臼山(現在の笹山公園)の麓に主栄山寿福寺という真言宗の寺があった。和尚の總圓は頗(すこぶ)る子煩悩で、寺で小僧をしている清美に対しては、それこそ目に入れても痛くないほどの可愛がりようであった。

 總圓と清美は平穏に過ごしていたが、ある年の盂蘭盆のこと、總圓が檀家の棚経から寺へ戻ってくると、小僧の清美が高熱を出して臥せっていた。總圓はいろいろと手を尽くして介抱したが、その甲斐もなく無情にも清美は夭折してしまった。

 葬儀も滞りなく済んだその夜、どこからともなく迷い込んだ一匹の可愛い三毛の子猫が總圓の膝にすり寄って来た。性来の猫好きでもあり、小僧の清美を亡くしたばかりで寂しさもあって、次第に總圓の愛情はその三毛猫に注がれるようになった。

 三年ほど経つと、毛並みも艶々と見違えるように美しくなり、体もずば抜けて大きくなって、寺を訪れる人たちを驚かせた。總圓の無類の猫好きとともに「寿福寺の三毛」は、界隈の評判となっていった。中には「三毛が化けている姿を見た」などとのうわさ話をする連中もいて、人々の好奇心を煽っていた。

 もとよりそんなうわさ話などには無頓着な總圓であったが、ある年の秋の夜、その三毛が手拭いをくわえて外出するのを見かけた。しかもそれが毎晩続くので、總圓も気になってある夜三毛の後をつけて行った。

 三毛は總圓が後をつけていることに気づかず、人家も疎(まば)らな田畑の畦を縫って北郷ノ原(現在の北新地付近)の東側の高台の森まで来た。すると辺りはただならぬ気配がするので總圓は木陰に身を隠し、息を殺して前方の三毛の方を見ていると、どこからともなく数百匹の親猫、子猫が集まって来た。猫たちは、それぞれ口に魚や油揚げ、饅頭、マタタビなど、猫にとっての御馳走をくわえて来て、三毛の周りに山のように盛り上げていき、猫だけの妖(あや)しい月見の宴が始まった。
(了

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