糸島新聞
創刊100周年

糸島新聞社
1917年(大正6年)創刊
福岡県糸島市前原東1-8-17
TEL:092-322-2220
FAX:092-324-5115
itoshin@blue.ocn.ne.jp

ニュース
News List

詩人のビナード氏と作家の高橋氏が対談 時代と言葉テーマに200分

2019.04.18

高橋氏(右)とビナード氏の鋭くユーモアたっぷりの語りに、参加した約130人は沸き返った=龍国禅寺

 糸島市二丈波呂の名刹(めいさつ)・龍国禅寺の本堂で、アメリカ生まれの詩人アーサー・ビナードさん(51)と作家の高橋源一郎さん(68)が、「おわる時代に、はじまる言葉」をテーマに、依存症から憲法、元号、インターネットなど、休憩を挟み約200分間、縦横無尽に語り合った。同寺で毎月開催する「おとなの寺子屋」の特別編。

 元号が間もなく「令和」になる話から、ビナード氏は「昭和20年8月6日と9日は残酷に定義づけられ、(歴史的な)『くい』が岩盤まで届いている。とんでもない加害と被害、殺し合いの時代が昭和。(対して)平成の時代の『根っこ』がないのがすごく恐ろしい」と指摘。「(2011年3月11日以降の)福島第一原発のメルトダウンは、日本のこの数千年の歴史の中で、恐ろしい意味をはらんだ出来事。それほどの問題を抱えられる市民になるには、過去を知ること」とし、事実や歴史を掘って認識する必要性を強調した。

 月刊誌『新潮』に「ヒロヒト」を連載中の高橋氏も「歴史は森みたいなもの。自分で行って道を作らないと。そこに入って見えるものは人によって違う。今のことを知るには、過去のことを知らないといけない」と語った。

 また、高橋氏は米の作家ジョージ・オーウェルの1949年刊の未来小説『1984』が、情報を隠し改ざんする権力者を描いたことについて、現代を予言したように当たっているとし、「権力は言葉の問題。彼らは(自分たちが)作る言葉を広め、みんなは知らないうちに自分が使ったその言葉で、思考するようになる」と話した。

 関連し、平成2年に来日したビナード氏は、「世知辛い」という言葉を覚えたが、この10年間は自分以外誰も使ってない、と笑いを誘い、「日本社会の世知辛さは当時の百倍になり、いま一番合っている言葉なのに消えた。それに代わる言葉は『生きにくい』。本人の適応能力の問題みたいだ」とあきれてみせた。

 最後に、ビナード氏は制作中の絵本と絡め、「木の形は、木が芽を出してからずっとその木を揺らした風の形になる、と聞いた」と話すと、高橋氏が「(人間も)どんな時間を過ごしたかで今がある。ちゃんと過ごさないとヤバいよね」と締めくくった。

ニュース一覧