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夏の夜に味わいたい 糸島の怪談

2018.08.21

《志摩編》釜負の幽霊

夏の夜。生暖かい風が頬をなでるような日は、怪談にそそられる。『糸島伝説集』(糸島新聞社刊)には、本当だろうかと思うような怖い話が、糸島の地名入りでいくつも並んでいる。その中から背筋が冷える話(要約)を、志摩編と二丈編に分けてお届けする。

いつの時代の話か不明だが、当時の国守が旧志摩町の桜井にご巡遊された。休息所に当てられた庄屋の家では、早朝から準備に追われた。
昼食の支度をしていた下女のお初が、炊き上げ寸前の釜を割ってしまった。さあ大変。国守の日程まで狂わせる羽目になった。かんかんに怒った主人は、泣きじゃくるお初の背中に割れた釜を荒縄でがんじ絡めにくくり付け、家から叩き出してしまった。
お初は事の重大さにおびえ切り、吉田にある実家へとぼとぼと歩いた。峠を越え実家のある里が目に入った途端、お初は割れ釜を背負った自分の姿を母親が見たらどんなに泣き叫ぶかと思い、また今後のおとがめがどうなるかなど案じてしまい、泣けなくなった。
垂れ下がったハゼの枝が視界に入ったお初は、釜を背負ったまま、枝に帯を掛けて首をつって死んでしまった。

里人たちはここを釜負の峠と呼ぶようになる。幽霊火を見たとか、夕方に女のすすり泣きが聞こえたとか、雨の夜に傘が急に重くなり振り返ると女の生首が載っていたとか。奇怪なうわさが語り継がれた。

その小高い山の上に小さい地蔵堂がある。お初の霊を慰めるために里人たちが建立したのであろうか。

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