【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》

まち角アイキャッチ

 新しい年を迎える度に、心に刻み直す言葉がある。「知行合一(ちこうごういつ)」。この面で取り上げているオーレリアン樹庵の長岡秀世さんから10年ほど前に教わった。知識と行為は一体であり、実践を伴わなければならないとする陽明学(儒学の一派)の中心思想だ▼長岡さんは民俗学者、宮本常一(1907~81)の研究に打ち込み、4冊の本を出版している。宮本は地球4周分の延べ16万㌔の旅で日本人の営みを探求したが、学問だけにとどまらなかった。教育者や地域振興の指導者として、民俗調査で得た成功事例を教示指導し、民衆のために生かした▼その精神はまさに知行合一だった。長岡さんの私塾で、宮本について学んだ糸島市神在東の長尾康子さんが、自ら描いた挿絵とともに宮本の名言至言を紹介する「時代の羅針盤」を制作した。その中にある名言の一つ「知っているだけでは、なにもしないのと変わりないのです」。実践を大切にした人ならではの言葉だ▼旅に学んできた宮本。こんな文章にも深みがある。「あるく みる きく 考える」。宮本は既成概念をうのみにせず、自らの足で歩き、目で観察し、旅先で出会った人に尋ね、考えてみる大切さを説く。あてがわれたものに満足していては決して成長はない▼守りの壁を越えていくような名言もある。「たえず夢をはぐくみ、停滞のないところにこそ生きる意味がある。みんな未完成でありたい」。もう、これでよいのだと思ってはいけないという。成長していく夢を追っていく。「永遠の若さ」がある年にしていきたい。

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