【糸島市】根こぶ病/菌の生存が長く厄介

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ハクサイの根こぶ病

【ドクター古藤の園芸塾】 8

ハクサイの根こぶ病

 昨年の秋口にダイコンやカブなどの根物や、ハクサイ、ホウレンソウといった葉物野菜の栽培を始めた方は、今がまさに収穫の終盤を迎える時期ですね。この時期の野菜は、厳しい寒さに負けないよう体内に糖分を蓄えており、野菜本来の甘さは格別です。
 ところが、昨年末から「カブの葉が突然しおれたけん、何でかいなって、引き抜いたら、根のぶくぶくして、気持ち悪か~」「ハクサイの根のグルグル巻いて、気持ち悪か~」などの相談がたくさん寄せられました。
 いずれも、カブやハクサイ、キャベツ、カツオ菜などアブラナ科野菜に発生する 「根こぶ病」 。土中に潜む病原菌が異常増殖し、根に浸入。根がこぶ状になったり、変形したりする土壌病害の一種で、アブラナ科野菜栽培が多い、糸島管内でも増加傾向にあります。糸島農業高校の生徒さんによる研究も行なわれており、地域全体で対策が必要な土壌病害です。
 感染すると、土中の養水分を吸収する力が衰え、日中は葉や茎がしおれ、夕方になると回復する初期段階を経て、徐々に生育が悪化。株全体が枯れてしまうこともあります。
 水はけが悪い場所や土壌酸性度の状況によって菌の増殖率が高くなるのが原因で、5~7年近く生存することも分かっています。一度発病した場所では長期間、感染の危険性があり、厄介です。


 プロの方は、指定防除剤などを駆使して対応していますが、土の中の病原菌密度を下げるため、薬剤などに頼らない対処法は次の通りです。
 ▽水はけをよくするため、高い畝にする▽土壌が酸性だと発生率が高くなるので、種まきや苗植え付け前にかき殻石灰「シーライム」を多めに施し、中性近くにする▽アブラナ科野菜の連作をしない▽「糸島よか堆肥くん」のような植物繊維が豊富な堆肥を多めに鋤きこむ。また、石灰窒素肥料を200グラム/坪、土壌に混ぜることで、抑制効果を得る▽カブやハクサイなどの品種では「CR種」という抵抗性を持った品種を導入するなど。


 発病した畑では、病原菌株を土中に残さず、株を根ごと丁寧に掘り上げます。病原菌は水を介して広がるので、決して被害株を水路などに捨てない、放置しないなどを守り、ごみとして処分するか、焼却してください。作業に使った道具も熱湯などで消毒するなど対処してください。
 根こぶ病発生の最大要因は、地力低下による菌の増殖。連作を回避し、糸島よか堆肥くんのような植物繊維タップリの腐植堆肥をしっかり施し、地力の向上に努めることこそが、根こぶ病のほか、立枯病などあらゆる土の病害などにも耐えうる環境づくりの一歩となります。
 「一に土作り」。何事も基本が大切です。


(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年1月13日付

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この記事を書いた人

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