糸島市志摩の船越漁港で2日、船の上でお正月をお祝いする「乗り初め」を行う漁師の姿が見られた。
年末に、山で青竹を調達し、日章旗、大漁旗をくくりつけ船上に高々と掲揚。船の正面には大きなしめ縄を飾りお正月を迎えた。元旦は船には乗らない。年明け2日、風呂敷包みを携えた漁師らの姿がちらほらと漁船に向かう。船の中央に位置するブリッジの神棚へ、お神酒や鏡餅、酢の物などの祝い三種をお供えし、船と共にお正月を祝うのが昔からの習わしだ。
「漁師にとって、船は家よりも大事なもの」。二双吾智網で活躍する次義丸にお正月のお供えをした藤野和則さん(52)は、「今日が『乗り初め』。昔はほとんどの船が大漁旗をはためかせてお正月を迎えた。風の強い季節なので漁港には旗がバタバタと鳴る音が響き渡っていた」と話した。
次義丸の隣に並ぶ第二福栄丸の漁師の奥さんは、「船にも家にも鏡餅を飾るから、しめ縄もお餅も二つずつ。鏡開きの時はお雑煮を持ってきて船上でいただく。以前イカ漁をしていた時は、夜中にお雑煮を食べ、出漁していたことも」と、嫁いでから約35年の行事の様子を懐かしく話した。
昨年、船越漁港では常設のカキ小屋を整備。2日からかカキ小屋もオープンし、たくさんの人が冬の味覚を楽しんだ。カキ小屋服部屋の服部清幸さん(55)は、「従業員も正月休みなので家族総出でお客さんを迎えます。1年で一番にぎわうときかな」と笑顔で話した。