メンチカツを主軸に総菜やお弁当を販売するお惣菜のクローバー(谷口晋介社長)は昨年6月から、糸島産の赤米やはちみつなど素材にこだわったぼた餅作りに熱を入れる。Aコープ前原店の厨房で、ひと月6千個を製造し、同店と伊都彩菜で販売する。
「なんでぼた餅?と思いますよね。僕があんこ好きなんです」と谷口さんははにかむ。「大好きなあんこを生かしたおやつを」と、あんバタートーストなども試したが、「ぼたっとした気取らない姿で、色んなお菓子がある中飽きのこない味。日本人の心ですかね」とぼた餅への愛着を語る。
思い立ってからは、小豆の品種や砂糖の種類などを変えながら試行錯誤し、半年かけて納得のいくあんこを練り上げた。小豆は豆のほくほく感が感じられる北海道十勝産の品種「北ロマン」に、小豆と同量使う砂糖は国産のきび砂糖に、隠し味は少量の黒糖と糸島でとれたはちみつ、仕上げに糸島産の塩で甘さを引き締める。
1回に仕込む量は小豆16㌔。3時間かけ小豆をゆでる作業はスタッフがし、大ベラでゆで加減をすくって確認するところから谷口さんにバトンタッチする。四つ並べた大鍋を順番にかき混ぜること1時間。サラサラだった煮汁の粘性が高まると、ぷつっぷつっと熱々のあんこが飛び散る。腕のやけど痕はあんこ練りの勲章だ。
手塩にかけたあんこをのせるのは糸島産のもち米。二丈の赤米を少量混ぜた赤米入りと白の2種類を作る。赤米の配合具合も研究を重ね、食感も気にならない程度に。小豆の練り上げからぼた餅をつくるところまで谷口さんが「妥協は許せない」と一手に担う。会社立ち上げ当初から一緒に働くスタッフは「私でさえ手伝わせてくれんのよ」とあきれ顔だ。
「冷凍しても味が落ちない研究を進めて、店舗前に置く自販機で販売したい。冷凍できたら市外に送ることもできるしね」。より多くのお客さんの元へおいしさそのままでどうやって届けるか、夢を語る谷口さん。
お彼岸の間は3千個を作る予定。小豆の赤色には魔除けの効果があると古くから信じられてきた。小豆と赤米のダブルの赤で邪気を払い、ご先祖様をお迎えして、一緒にほっぺたを落としてみては。