糸島漁業協同組合(仲西利弘組合長)は、大根の葉などを与えて養殖した「ムラサキウニ」の試験販売を、糸島市志摩岐志のカキ小屋で始めた。同漁協は「小魚の隠れ家やアワビ、サザエのえさとなる海藻を食べ尽くす〝厄介者〟の商品化が実現すれば、海の環境を守り、さらに漁業者の新たな収入源になる」と期待している。
糸島海域では、一部の漁場でウニによる海藻への食害が進み、魚のすみかや産卵場所となる海藻の減少がみられる。そのため、同漁協は2010年ごろから、ムラサキウニやウニの一種のガンガゼなどを除去してきた。
県水産海洋技術センター(福岡市西区今津)によると、海藻が少なくなった海にいるウニは身入りが悪く、商品にならないウニを獲らないため、さらに食害が進んで海藻が育たないという悪循環が起きているという。
同市志摩岐志のカキ小屋「大黒丸」(中西圭一郎さん)では昨年11月から、ムラサキウニの商品化と藻場の保全を目指し、試験的に養殖を開始。カキの選別いかだの一角にかごを沈め、400個を育てている。
えさには地元糸島で入手した、捨てるはずの大根の葉を与えている。同センターの調べでは、ウニは数カ月で商品化サイズまで身入りが回復し、出荷できる状態に。3日、関係者が試食したところ「濃厚でありながら後味があっさりして、食べやすい」と好評だった。6日から平日限定で、カキ小屋の客に3個千円で販売を開始している。
岐志の「高栄丸」や船越の正栄丸でも400個ずつ養殖している。数年前からは福吉ウニ部会も同市二丈の福吉漁港で、地元のうどん屋でだしを取った後のコンブなどの提供を受け、千個ほどを養殖。身が入り次第、販売を予定している。
仲西組合長は「厄介者が資源になれば、除去も進むだろう。悪循環を好循環に変換できるよう、取り組みを進めたい」と期待していた。