コラム まち角

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 インドネシア・バリ島の伝統芸能、ガムランの幻想的な音色が糸島市飯原の公民館に響き渡った。美しい棚田が広がるという共通点があるバリ島と糸島の里山。やはり、ガムランと糸島の風土との相性はとてもよかった。竹製の鍵盤楽器と竹笛、ゴング(ドラ)による演奏と神秘的な踊りを、田園地帯の公演会場で鑑賞していると、常夏の島のゆったりとした日常が思い浮かんできた▼20年前にバリ島を旅したことがある。現地のガイドに案内され、農村部にも足を運んだ。熱帯性の気候がもたらす豊富な水と、長い火山活動が生んだ農業に適した土地。そこで棚田が営まれていた。牛を使った農作業にどこか懐かしさを感じながら、あぜ道に踏み入れると、この島ならではの光景に出合った▼小さなほこらの前に、鮮やかな花々を飾り付けたバナナの葉のかご。甘い煙を漂わせる香が添えられていた。神様への供え物だ。島民の多くが信仰するバリ・ヒンズー教では、さまざまな自然の中に神が宿ると信じられている。多神教で、日本の「八百万(やおよろず)の神」と似たところがある▼ガムランはバリ・ヒンズー教の祭礼や冠婚葬祭で演じられる。宗教が違うとはいえ、糸島市の高祖神社や白山神社で奉納される神楽と、重ねて感じられるところがある▼バリ島は米の二期作、三期作ができる土地柄。自然がもたらす恵みを受け、暮らしに余裕が生まれることで伝統芸能が盛んとなり、島民の精神性が高められてきた。糸島も同様に心の豊かさをはぐくんできた生活がきっとあるはずだ。糸島の伝統文化を見つめ直し、それを探してみたい。

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