イヌツゲとかごを使った伝統的なイカかご漁が10日、船越、野北、深江の市内3つの漁港で始まる。
10軒の漁師がイカかご漁をする船越漁港では、直径1㍍の円柱状の枠に茶色の網がかけられたイカかごがあちこちに積み上げられている。春先に産卵のため沿岸の藻場に寄ってくるコウイカを捕獲する。特徴的なのは、庭木や垣根によく用いられるモチノキ科の常緑低木、イヌツゲの枝の束をかごにくくりつけることだ。かごを海底に沈めると、イヌツゲに産卵するため寄って来たコウイカがかごの横穴から中に迷い込む。カゴは2、3日に一度引き揚げては戻す。漁期が終わる頃には、イヌツゲにはびっしりと卵が産み付けられており、かごはどんどん重くなる。その卵は海に戻し、また翌年に備える。
今年からイカかご漁を再開するという丸一丸さんは、網を繕い、かごの骨格を支える竹を手直しし、と昨秋から準備を進めてきた。漁港のあちこちで作業する漁師さんらには思わぬ悩みの種があるという。「イカの前に先客が迷い込んできて…」漁港をうろうろしているネコや渡り鳥などが、かごの横穴から入り込んでしまい、出すのに往生するという。「本命の大入りを期待したい」と笑う。
コウイカの名前の由来は、背側にあるサーフボードのような石灰質の甲。また、墨を蓄える袋が非常に大きく、スミイカとも呼ばれる。身は肉厚でもっちりとして甘みがあり、熟成させるとさらにうま味が増す。墨はイカ墨パスタなどに重宝される。
大きな甲に短い足が並ぶ特徴的な姿は、「志摩の四季」伊都菜彩地元の直売所に並ぶが、大半は市場を通し、県内などでの消費に回る。志摩の四季内にある「志摩の海鮮丼屋」、福ふくの里に隣接するレストラン「旬菜旬魚ふくふく」、市内カキ小屋のメニューに季節限定で並ぶところもある。
漁港の風景とともにい春の訪れを味わいたい。