【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》

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 「何のために」。先月開かれた糸島市商工会創立10周年記念式典の後、こう題された講演会があった。講師は三重県の実業家、中村文昭さん(54)。講演は2時間に及んだが、会場に訪れた一人一人の人生を心の底から応援する熱い語り口に、もっと聞いていたいと望んだ人も多かっただろう▼進学するのか、就職するのか。何も決めないまま18歳のときに上京した中村さん。なじみの焼鳥店で、生き方を根本的に変えてくれた生涯の師匠となる男性と出会う。「何のために三重から出てきたのか」「金儲けなんてものは人生の目的ではないぞ。それはつまらないものだ」―。どんな人間になりたいのか、決してぶれない理念を持つよう師匠は中村さんに説いた▼ほれ込んだ師匠のもとで、野菜の行商を経験した中村さんは人生の目的をこう定めた。「人の役に立ち、人に喜ばれることに、満足できる人間になりたい」。かつて事業で成功した師匠。しかし、金持ちになると傲慢(ごうまん)になり、支えてくれた友人たちが去り、多大な借金を抱えてしまったという。その失敗から立ち直り、歩み続ける師匠の背中を追った▼中村さんが人を喜ばせるためのルールとしているのが人から何か頼まれたとき、0.2秒で気持ち良く返事をするというものだ。人は信頼している相手にできないことを頼みはしない。だから「頼まれごとは試されごと」。できない理由ばかりを口にすると、人との縁は遠のき、応援団を失う。一方、相手を思って対応すれば、人間関係がいい方へ向かう。頼まれごとはチャンス!。人との縁を「でっかく生かす」キーポイントだという。

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