【声の野鳥だより】9

繁殖期向け踊りの儀式/コガモ

撮影:野鳥録音家 田中良介

 カモ目カモ科で、体長は37.5センチと小型。私たちが目にするカモの中で、最も小さいカモです。少数は国内で繁殖しますが、基本的には秋に日本へと渡来してくる冬鳥です。
 オスの頭部は明るい栗色で、目の周りから首の横にかけて緑色の「くま取り」があり、これに日光が当たると明るく光ってとても美しく映えます。胸は白色で黒くて小さい斑点があり、脇から腹は灰色で黒く細い横縞があります。メスの体色はほかの種類のカモ同様、全体に明るい褐色の中に黒い複雑な模様があります。
 前にも書きましたが、コガモも、オスの美しい色は繁殖地にいるときに羽が生え変わり、メスとほとんど同じ地味な色となります。そして、日本に渡って来る秋になると、また美しい羽に戻ります。

 コガモの鳴き声ですが、「ピッ、ピッ」「ピリッ、ピリッ」、または「ピュリッ、ピュリッ」と管楽器のピッコロを吹くような高い声で鳴きます。いっぽうメスの声はマガモのメスに似た鳴き方で「グェーッ、グエーッ」「クェ、クェェェェ」としゃがれた声で鳴きます。
 オシドリやコガモなどカモの仲間は越冬中に、来るべき春の繁殖期に向け、メスとペアとなるために一種の儀式をします。これをディスプレイと呼んでいます。コガモの場合は、1~2羽のメスを囲んでオスが多数集まって胸を張り、首を伸ばしたり縮めたりするダンスをしながら高い声で激しく鳴きます。こうした行為の中でペアが誕生して晩春から初夏にかけて繁殖が行われるのです。

コガモの鳴き声

(野鳥録音家・田中良介)

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