【声の野鳥だより】44

糸島上空を飛び北帰行/ナベヅル

野鳥愛好家の國友靖彦さん撮影

 体長96センチ、翼開長は185センチで、体長より広げた翼のほうがはるかに大きい鳥です。わが国でツルと言えば、北海道・釧路で有名なタンチョウなど全部で7種が観察されますが、そのうちナベヅルはもっとも数が多く、およそ1万5千羽が鹿児島県出水市の保護地へ渡ってきます。このツルの保護地区へは他の種類、たとえばマナヅルも渡って来ます。

 渡来の時期は10月~12月。ほとんどのツルは春になると中国北部やシベリアの繁殖地に向かって北帰行をするので、かなりの数が糸島市上空を飛ぶことが想像されます。長い旅の途中には危険も多く、傷ついた個体が糸島市の弁天橋上流の干潟に降りて休んでいることが時々話題になります。

 私は、出水のツル渡来地まで鳴き声の録音に出かけた経験があります。一羽一羽の声が大きく、数千羽のツルが出す音量はものすごくて驚きました。また、越冬中のツルは家族単位で暮らしているので、父鶴の声、母鶴の声、子供の鶴の声がはっきり違って聞こえてとても興味深く思いました。

 普通、野鳥は繁殖期によく鳴くと、この欄でも書いてきましたが、ツルたちにはそれは当てはまらないようです。

 自然の中でのツルは広い草原で草の種子や根、魚や両生類、昆虫などを餌としているのですが、出水の越冬地では人から与えられた小麦や小魚を毎日食べているそうです。

 今回をもちましてこのコーナーを終了させていただきます。温暖化、異常気象により野鳥に代表される野生生物の未来は明るくありません。皆さんが温かい気持ちで自然の動植物への関心を持ち続けてくださることがなにより大切なことです。それでは、またいつか、紙面を通し、いろんな動植物についてのお話ができたらと思います。1年余りにわたりお読みいただき、大変ありがとうございました。

ナベヅルの鳴き声

 (野鳥録音家・田中良介)

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この記事を書いた人

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