【声の野鳥だより】37

歌舞伎の演目が名に/センダイムシクイ

 スズメ目ウグイス科で、体長12・5センチ。4月中旬にわが国の山地に渡って来て繁殖する夏鳥。基本的には、やや高い山の四、五合目あたりの広葉樹の、中ほどの高さの枝が広がった中で「チヨチヨビイー」と良く通る声で鳴くことが多く、特徴がはっきりしているので、鳴き声だけですぐそれと分かる鳥です。

 この鳴き声を「焼酎いっぱいグイーッ」と聞きなすのは有名ですが、ほかに「鶴千代君ぃー」と聞きなします。鶴千代君の名から、江戸時代の仙台藩のお家騒動に取材した歌舞伎の有名な演目「伽羅(めいぼく)先代萩(せんだいはぎ)」を想起し、この鳥の名をセンダイムシクイと名づけた先人のセンスの良さに、この鳥の声を聞くたびに感心してしまいます。

 もう一つ、私がこの鳥に親しみを持つのは、意外と人を怖がらないで、こちらがジッとしていると頭の真上までやって来て長くさえずってくれることがあるからです。春、秋の渡りの頃には、街なかの公園の樹木の枝でも姿が見られることもありますが、4~5月の繁殖期のようにさえずることはありません。

 自身の体験で恐縮ですが、2017年の初夏に韓国に録音一人旅に出かけたとき、釜山郊外の有名寺院の敷地内の隅で腰を下ろして昼食を食べていたら、真上にセンダイムシクイがやって来て、まるで私に聞かせようとするかのように、澄んだ声で長く鳴いてくれたことがあります。

センダイムシクイの鳴き声

 (野鳥録音家・田中良介)

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