【声の野鳥だより】42

谷川のほとりに高い声/キセキレイ

 スズメ目セキレイ科で体長20センチ。ハクセキレイやセグロセキレイと同じ仲間で両種よりやや小柄な鳥です。頭から背中、尾までがやや濃い灰色、喉の下から腹部が淡い黄色をしているので、この名前がつきました。

 生息場所はハクセキレイとセグロセキレイがおもに川の中流域から河口部なのに対し、キセキレイは川の中・上流部で、山麓を流れる小川などでよく姿を見かけ「チチン、チチン」という高い鳴き声を耳にします。

 平地から低山、さらに標高の高い場所を好み、時に標高2000メートルの高山でも姿を見ると言います。

 私自身の経験ですが、大分県玖珠町の標高3~400メートルの山中で草原の道を歩いていたとき、突然傍らのやぶから1羽のキセキレイが飛び出し、高い声で鳴きながら私の足元を攻撃してきたので驚いたことがあります。きっとすぐ近くに繁殖中の巣があったのでしょう。

 「ごめん、ごめん」と謝りながら引き返して道を迂回(うかい)しましたが、いつも低山の川辺で見る可愛いキセキレイにこんなに激しく叱られるとは、とあらためて野生の強さを実感しました。

 ただ、残念なことは、ここ数年低い山地に出かけても、キセキレイの姿を見ることがほとんどなくなったことです。里山の崩壊が進み、清流やそのほとりの植生環境やイノシシなど野生哺乳類の増加も関係していると思います。

 ある種の野生動物が数を減らすということは、そうした傾向がその種だけにとどまらないということに人間はもっと関心を持って憂慮しなければいけないですね。

キセキレイの鳴き声

 (野鳥録音家・田中良介)

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この記事を書いた人

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