低く単純な声で求愛/ツツドリ
カッコウ目カッコウ科で体長32・5センチ。カッコウやホトトギスと同様、初夏に南の島々からわが国に渡って来て托卵という方法で繁殖する野鳥です。カッコウの鳴き声は単純に聞こえますが、ツツドリはもっと単純で「ポポポポポポ」と、まるでガラスの瓶か竹筒に息を吹き込むと鳴るような低い声を出して鳴きます。鳴くのは雄が雌に求愛するためです。
糸島市でいえば、南部の雷山などの中腹(カッコウとほぼ同じ高さ)で声が聞こえます。開けた草原や、まばらな低木と草地の混合地にいることが多いため、その姿を目にするチャンスもあります。
托卵する相手の鳥は、ウグイスなどとほぼ同じ大きさのセンダイムシクイという可憐な野鳥に多く托卵します。私は個人的にセンダイムシクイが好きなので気持ちは複雑です。
托卵するカッコウ科の鳥の卵は本来の巣にある卵より早く孵(ふ)化して、他の卵を全部巣の外に押し出して捨ててしまい、その巣を独り占めにします。
托卵された親のセンダイムシクイは早く孵化した裸のカッコウ科のヒナをわが子と思って一生懸命に育てます。自分の子どもでもなく、親鳥の何倍も大きい他種の巨大なひなのために懸命に餌を運んで与えます。実に不条理な話ですが、このような繁殖方法を進化の過程で手に入れたカッコウ科の鳥の勝利というわけなのでしょう。カッコウ、ホトトギス、ツツドリほかカッコウ科の鳥たちの声に免じて許してやりましょう。
ツツドリの鳴き声
(野鳥録音家・田中良介)