【声の野鳥だより】43

里山の耕作地近くで繁殖/サシバ

 タカ目タカ科で体長49センチ。翼開長102~120センチ。全体にやや赤みをおびた褐色で、春に東南アジアから繁殖のため、日本に渡って来る中型のタカです。ハチクマとともに、初秋に集団で南へ渡去する様子が風物詩として話題になることがあります。

 今から20年ほど前から、私は福岡市西区のある里山の、畑の脇の林に毎年渡って来て繁殖するサシバを観察し、鳴き声を録音していました。しかし、2~3年後に畑の耕作が放棄され、たちまち笹や低木が生い茂るようになると、そのサシバは姿を目にしなくなりました。

 サシバのおもな餌は、ネズミや小鳥、トカゲ、小型のヘビ、昆虫など動物質のものですが、里山の畑がよく耕作されていると、こうした動物類の数も多い上に、畑を取り巻く樹木からもそれらを容易に見つけることができます。

 畑の手入れが放棄されると草が生え、竹や低木も増殖し、獲物となる小動物の発見が困難になるので、このような環境では生活はもちろん、子育てもできなくなり、やむを得ず、別の場所を見つけなければなりません。

 低山の小さな耕作地は、畑の持ち主の高齢化などで次々となくなり、サシバの姿を見つけることも難しくなりました。ここ数年、糸島方面の山地では、ほんの時折ですが、繁殖期に「ピックイー」というサシバ独特の声は聞こえるものの、畑地の上空を低く舞うサシバの姿を見ることはできませんでした。

 糸島にサシバは間違いなく毎年来ています。サシバの好む環境が糸島に残っていくことを願っています。そしてあの独特の「ピックイー」という鳴き声が絶えませんように。

サシバの鳴き声

 (野鳥録音家・田中良介)

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この記事を書いた人

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