ウメノキゴケ/樹皮に生える地衣類

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びっしり繁殖したウメ ノキゴケ

【ドクター古藤の園芸塾】 12

ウメノキゴケ
ウメノキゴケ

 この時期は梅や椿、蝋梅(ろうばい)などの花が咲き始め、春の訪れが近いことを告げてくれていますね。一方、庭木の生育状態(病虫害や花が咲かないなど)の相談をされる方が年々増えています。相談の中で多いのが「樹木の表皮に苔(こけ)が生えて、どうかなりませんな」「苔の生えて木の弱っとるとですかいな」など。落葉した樹木に光が差すと、500円玉くらいの大きさの薄青いカビが幹にびっしり。
 この苔の正体は 「ウメノキゴケ」 。見た目は苔ですが、菌類と藻類などが共生する地衣類の仲間。藻が光合成を行い、菌類を助けるという関係がある変わった植物です。神社の石の鳥居などでもよく見受けられます。
 地衣類が付くのは、決していいことではありませんね。古い樹皮がずっと付いていることになり、木の新陳代謝が衰えている証拠でもあります。というのも、木は元気な生育をしているときは、新しい樹皮が生成され入れ替わります。
 人といっしょで、元気なときはみずみずしい木肌をしていますが、年をとってくると、だんだんと樹皮の入れ替わりが遅くなり、古い皮がいつまでも付いています。


 古木になり生育の衰えが進んだり、たとえ若木であっても、何らかの原因で根が弱ったりすると地衣類の発生要因となります。つまり、「コケが付くから木が弱る」といわれますが、「木が弱って成長しないためにコケが付く」のが本質です。


 対処としては、根に活力を与えること。株元周りの固くなった土に、直径1センチ、深さ15センチほどの穴を数カ所開け、新鮮な酸素を地中に供給する「エアレーション」。二つ目は、油粕などの有機質肥料を与えることも大事ですが、株元周りに土をフカフカにしてくれる腐植堆肥「糸島よか堆肥くん」などをまく。三つ目は幹、枝表面からの防除。この時期に特におすすめなのが「石灰硫黄合剤」の散布。有機資材として環境に配慮した、硫黄と石灰の化合物です。欠点は硫黄臭が強いことですが、石灰硫黄合剤は、桃や梅、すももなどの、新葉が縮れる「縮葉病」が増大する中、その防除剤としても高く評価されています。

冬の樹木に石灰硫黄合剤


 冬季使用が基本で、落葉果樹類は10倍希釈。ミカンなどの常緑果樹は40~80倍希釈で使用すると良いでしょう。なお、希釈液に展着剤を加用することで、幹や枝への展着率が向上します。
 春に元気な若芽の発生や美しい花を咲かせる樹木、花木類。樹木の有機的管理は、この寒い時期にいかに対応できるかが、ポイントです。剪定(せんてい)と同様、冬の管理をしっかり行って、元気な樹木類を育ててください。

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年2月10日

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この記事を書いた人

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