【ドクター古藤の園芸塾】 16
「土作りって、よく耳にするけど、牛ふんといしばい(消石灰肥料のこと)ば、入れときゃよかったい」「鶏ふんをぼっこし(たくさん)入れて土と混ぜとけばよかったい」。昭和10年代生まれのおじいちゃんやおばあちゃんたちの会話。う~ん、確かに有機的で間違ってないような。しかし、私が考える土作りは、土に入り込んだ酸素や水が腐らず、生き生きとしていることと、とらえています。
例えば、フン臭が強い堆肥や鶏ふんなどを土に施してしまうと、土壌にとって大切な酸素が取り込めなくなり、水も腐り、せっかくの堆肥を入れた土作りが逆効果となってしまいます。
加えて、「すて(油粕のこと)ば入れとけば、野菜のあもうなる(甘くなる)」。こちらも、施用量がほどほどならば、問題ありませんが、入れ過ぎるとやっぱり土の中で、発酵よりも腐敗化が進んでしまい、やっぱり土が傷みます。
そこで、春夏野菜栽培に向けての土作りの基本とは-
私は、トマトやキュウリなど春夏野菜の苗の定植適期は、安定した気温と野菜の初期生育を考慮すると、4月20日の「穀雨」と考えています。
そこから逆算すると3月中旬に腐植堆肥「糸島よか堆肥くん」を1坪当り7キロ目安で土に入れ、ここがポイントですが、10センチ程度の深さで、土と堆肥を混ぜ合わすことが重要です。比較的浅い位置に堆肥が混ぜ合わさっていると、酸素と水に触れることが多くなり、土が腐ることなく生き生きしてきます。
そのあと、定植2週間前を目安に糸島産有機石灰「シーライム」と、入手できれば米ぬかを、それぞれ500グラム/坪を入れることで、基本的な土作りができます。その際、基肥も必要ですが、お薦めは100%有機肥料「アグリ完全有機」500グラムと、火力発電の石炭燃焼灰から作られた「けい酸加里」140グラムを各1坪目安で入れることで、土台作りは完成です。
自然に堆積した落葉をはぐってみませんか。私は堆積した落葉は大好きです。何も手も加えていないのに落葉の原形は消え、深いところでは黒くボロボロになり、土になりかけています。よーく観察すると、ダンゴムシやワラジムシ、ヤスデなどの昆虫やホコリサイズの小さな虫がたくさんいますし、白っぽいカビも見られます=イラスト。臭いも森林の爽やかな香りがして、気持ちが穏やかになってきます。こんな落葉堆肥を土に入れると、土の中の酸素や水の鮮度が保たれ、植物の根も元気だろうなと想像できます。プロの生産者の方も私もこのような森林の世界が再現できる土作りを目指しています。
私たちが営む菜園では、山の大自然界のような土の環境づくりは、到底まねができるとは思いませんが、自然が教えてくれる営みは、どんどん取り入れるべきとだと思います。
糸島産食材がおいしいのは、自然が見守っているからだと思い、今後も土作りに精進していきます。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年3月17日