知恵者で厄介なウリハムシ
トマトやナス、キュウリにカボチャなど苗を植え付けた後、日増しに葉が大きくなったり、背が高くなったり、つるが伸びたりとぐんぐんと生育する野菜を見るだけでも私は野菜から元気をいただきます。
しかし、カボチャの葉に何か食害の跡が…。すると私の所も、「スイカの葉ば、何か喰いよる。なんの虫かいな」「ウリに茶いろーか虫のゆらゆら~と、飛びよーとばってん。その虫が悪さしよ~ちゃろか」と質問多発。そうなんです。食害の原因は「ウリハムシ」の可能性が大。
黄橙色の小さな甲虫類で日中、葉上に群がって食害し、特有の円形の食痕が見られます。発生が多いと丸坊主にされることがあり、幼苗では著しく生育が阻害され、成虫は4月頃から食害し、産卵を始めます。新成虫は5月下旬から7月にかけて現れる厄介者です。
成虫による葉の被害と幼虫による根部の被害が主で、一部成虫が果実表面を加害することもあります。成虫による被害は、植物が大きくなるとさほど問題になりませんが、幼苗期には葉を食害されて生育が抑制されたり、葉を食い尽くされて植え替えを余儀なくされたりすることも。幼虫の発生が多いと根部だけでなく茎にまで食入するため、株が萎凋(いちょう)、枯死します。
特に被害の多いのは、露地栽培のスイカ、メロン(マクワウリ類)カボチャなどのウリ科野菜であり、一気に枯死することも稀ではないようです。
感心するのは、葉の食べ方。いきなり葉を食べることなく、ぐるりとまわりながら葉の表面を薄くかんで十円玉くらいの円形の傷をつくり、その後、円内の葉を食害します。必ずこの食べ方を守り次々と葉を食べていきます。私より食事のマナーが良いのには驚きです。ウリ科野菜の葉に円形の食害痕があれば、ウリハムシの仕業です。
どうしてこんな食べ方をするのでしょうか。ウリ科植物は害虫に食害を受けると、苦い物質「ククルビタシン」を出して防衛する仕組みを持っています。しかし、ウリハムシはこの苦味物質に誘導され飛来、はじめに丸く葉をかじり、その物質が周囲から流れ込んで濃度が高くなるのを防いでから葉を食べると考えられています。ウリハムシの匠(たくみ)の技です。
同じウリ科でも、キュウリは品種改良が進み、苦み成分の「ククルビタシン」含有が少ないので、比較的ウリハムシの被害にあわないのもうなずけます。しかし、苦み成分が少なくなった分キュウリに、アブラムシやアザミウマなどの吸汁害虫が増えたのは因果関係があるのかもしれませんね。ちなみにニガウリの苦みはククルビタシンの仲間、モルデシンが含まれ、肝機能強化や血糖値低下作用があります。
さて、カボチャなどからウリハムシの食害被害を守るにはどうしたらよいでしょうか。光拡散を嫌うウリハムシはシルバーポリフィルムによる畝マルチは成虫の飛来防止に有効です。しかし、作物が繁茂すると反射が少なくなり、効果が低下してしまうのが弱点です。
一般家庭菜園の方は、30センチ真四角のアルミホイルを株元に敷くことで光拡散効果を高め、試験中ですが、不用な鏡やCD(コンパクトディスク)などを葉の下に敷き、効果を期待しています。さらに、収穫を終えたタマネギの葉を切り刻んで株元に播いておくと害虫忌避効果が期待されます。
ネギやタマネギの葉には人に涙を出させる硫化アリルの気化作用があり、虫の忌避効果を狙います。害虫防除効果として決して高いレベルではありませんが、害虫の特性、植物の防御能力などを関連付け、虫に負けない知恵を出すことで、最小限の被害に抑えることも、園芸の醍醐味(だいごみ)だと言えるでしょう。
どうしても害虫の被害にお困りの方は、定められた薬剤処理で防御するのも一理あるでしょうね。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
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