おいしいサツマイモ栽培
今が植えどきのサツマイモ。長さ30センチで、8節以上ある苗を植えると、植え込んだ後の初期生育がよく、200~500グラムの芋がたくさん収穫できます。植え込む株間は33センチで、苗の切り口から6節埋め込むのが理想です。
畑作作物の中では、連作障害が比較的起きにくく、最も乾燥にも強いので、お子様にも大人気の作物です。しかし、近頃、「サツマイモの苗が途中で腐れてしもうた」「あたしゃぁ、貯蔵しとったら、成り首から腐っとうちゃけん」「うちんたぁ、表面に虫のかじっとる痕がある」「ごつごつして、おいしゅうなか」など、育てやすさが売りだったサツマイモも、そうそう簡単に収穫するのは出来難くなっているようです。
原因はそれぞれあります。
①腐ってしまうのは、土壌感染力が強い「基腐病」の可能性が高いでしょう。主産地の南九州で、基腐病によって収穫が激減したことが新聞などでも大きく報道されています。
②表面がかじられた痕跡があるのは、土壌害虫のコガネムシ類の幼虫が食害したのが原因ですし、ごつごつしているのは、やはり土壌害虫であるセンチュウが寄生したことが原因です。③見た目は立派ですが、甘みが少ないのは、排水がよくなく、通気不足が原因だと考えられます。
そこで、どう対処すると良いのでしょうか。
まず、基腐病については、焼酎醸造メーカーや大学などの研究機関をもってしても、未だ防除法は見つかっていません。そこで、連作をしないことに加え、殺菌剤のベンレート水和剤500倍希釈液に植え付け直前の苗を30分間浸漬し、定植することで、一定の防除効果が得られています。家庭菜園の場合、今のところ自己防衛しかありません。
土壌害虫対策は、生育期の長い作物ですので収穫してみないとわからない面もありますが、プロの生産者の方は、指定された土壌混和剤を事前に土に混ぜ込んで対処されており、家庭園芸の方は収穫後、異変がありましたら、ご相談下さい。アドバイスさせていただきます。
サツマイモの主産地は熊本以南の火山灰台地で、収量も多く、おいしくなるのは、水はけがよく、地下水位が低いからです。九州南部のシラス台地は、地中に栄養養分が極めて少ない地とされていましたが、サツマイモは除草した草の灰を少しかけてミネラル補給をしてやれば、特段、肥料を与える必要はありません。
茎や葉がある程度成長することで、光合成によってデンプンを根に蓄えることができる性質が、風土にあっていたということです。栽培の最重要なポイントは、排水性が高いのはもちろんのこと、通気性がよく、土壌中に酸素が供給されること。そのためには、栄養要素を含まない、植物繊維堆肥「よか堆肥君」を土にまぜ、通気性を確保することと少し高めの畝での栽培をお薦めいたします。
さらに、カリウム成分を特に好むので、けい酸加里肥料を1坪当り100グラム基肥に加えるとよいでしょう。
最大の課題が旨みを出す貯蔵。貯蔵適温は13度。10度以下だと腐敗しやすくなります。湿度は90~95%が必要なので、いかに適温適湿を守れることが課題です。
どんな工夫で、おいしいサツマイモになるのか、各自で考えてみましょう。これも菜園の楽しみ方のひとつと言えるでしょうね。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
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