国の文化審議会(佐藤信会長)は23日、糸島市の櫻井神社の本殿と拝殿、楼門の3棟と髙祖神社本殿を国の重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申した。秋ごろの官報告示で正式に決定する。指定されると、市内の国指定文化財は計18件、建造物としては初となる。
櫻井神社の本殿は正面の柱間が三間(柱4本)の三間社流造(さんげんしゃながれづくり)で檜皮葺(ひわだぶき)。拝殿は開いた本を伏せたような屋根の切妻造妻入(きりづまづくりつまいり)、楼門は間口が三間で中央を戸口とした三間一戸(さんげんいっこ)。
同神社の縁起によれば、1610年の集中豪雨で岩戸(古墳の横穴式石室)が姿を現したことを契機に創立された。
本殿は棟札から1632年に福岡藩二代藩主黒田忠之公によって造営され、鮮やかに彩色された彫刻などで装飾されている。拝殿と楼門も同時期に建設されたと考えられる。
江戸時代前期の創建時期や由緒などが明らかで、岩戸宮から本殿、拝殿、楼門が一直線に建ち並び、福岡藩直営の社殿群がほぼ当時のまま残る希少な神社遺構として価値が高い。また、創建当時の境内の様子を描いた絵図や棟札7枚も合わせて国重文に指定される予定。
同神社の外山穰也(みのる)宮司は「国重文への指定は、身の引き締まる思い。これを契機に、より多くの方に参拝いただければ」と語った。
髙祖神社の創建は平安時代前期にさかのぼるとされ、中世には高祖城を本拠地とする原田氏、近世以降は福岡藩の黒田氏の庇護を受けた。
本殿は三間社流造で檜皮葺。2013年から4年かけて行われた調査で、現存する棟札から1541年に建立されたことが判明。県内では1458年建立と伝えられる太宰府天満宮の志賀社本殿(太宰府市)に次いで古い。
流造本殿としては県内最古で、歴史的価値が高いと評価された。棟札6枚も合わせて国重文となる予定。
同神社の上原和憲宮司は「国重文になるとは思ってもいなかった。このままの姿を維持しながら後世に引き継ぎ、守っていきたい」と喜んだ。
月形祐二市長は「糸島の先人たちが永く守り伝えてきた文化財が、2件同時に国の重要文化財に指定されたことは、たいへん光栄であり誇り。今後も文化財の保護と継承によりいっそう取り組んでまいりたい。この指定を機に糸島の文化財をより多くの方に知っていただき、訪れていただければ」とコメントした。