落ちのびた原田の姫君の伝説
野北(糸島市志摩)の「落石さま」(おちいさま=輝姫)の由来については、江戸末期の『筑前国続風土記拾遺』に「原田氏女子の霊を祭る」とあり、その頃にはすでに原田家の姫であるとの認識はあったようです。
野北では、女行商の元祖として祀られている輝姫ですが、志摩にはもう一つ、別の伝説もあります。
それは、志摩のあるお寺で、代々の住持の死期が近づくと、緋(ひ)色の袴(はかま)をはいた女の幻影を見るというもので、これはその住持が最期を迎える予兆といわれていました。この女が、原田の姫君で、落ちのびた際、この寺の住持が親切に世話をしたので、その厚意に報いるべく、病床で介護をするのだという話です。
この姫君には、侍女が二人ついていて、生魚の行商をしていたというのが、何となく輝姫の境遇を思わせます。
また、以前に「落石さま」が現在の位置から別の場所に移されたことがあったのですが、その時に北九州から原田家の末裔(まつえい)という者が来て、「落石さまが元あった場所に戻してくれと、夢のお告げがあった」といい、自費で現在の場所に戻したという話もあります。これも不思議なお話です。(志摩歴史資料館)
◇ 企画展「いとしま伝説の時代-伝説の背景にあるもの-」は9月10日まで、糸島市・志摩歴史資料館で開催中。同資料館092(327)4422