コラム まち角

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 ウクライナのゼレンスキー大統領がフランスのカンヌ映画祭開幕式にオンラインで参加し「独裁者は敗れると確信している」とスピーチしてから1年以上が過ぎた。「独裁者」とはロシアのプーチン大統領のことだが、ウクライナ各地では、侵攻してきたロシア軍と、ウクライナ軍の戦闘がいまだに続く▼ゼレンスキー大統領は第二次世界大戦が勃発した時代を思い、開幕式でこう続けた。「新たなチャップリンが必要です」。映画俳優のチャップリンは、自らが監督、主演を務めた「独裁者」(1940年)で、ドイツのナチ党を率いたヒトラーを痛烈に風刺し非難した▼世界の「喜劇王」が挑んだファシズム国家の独裁者との対決。自身初となる完全トーキー作品で、チャップリンは「史上最も感動的」と評されるスピーチを行った。ラストシーンでのことだ。瓜二つである独裁者と間違えられてしまったユダヤ人の理髪師は人々の前で演説する羽目になった▼「人生は自由で美しい」。本来、誰もが望むであろうこの幸せが、欲望によって毒されてしまっている。民族、人種が違っても、助け合いながら生きるのが人というものだ。平和を引き寄せようとする理髪師の切なる思いが胸を打つ▼たぐいまれな演説力で、大衆を扇動したヒトラーだが、人々の幸福を願ってやまないチャップリンの映画にはかなわなかったのか、映画公開後、ヒトラーの演説回数は激減したという。戦争を起こすものに毅然として立ち向かう勇気。平和を願っての行動が生み出す底知れない力を感じている。

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