夏の害虫、早期予防を
今年の異常なほどの猛暑。漁師の方も、海水温が高くなったのか「魚が昔のごと、捕れんごとなった」と嘆いていました。今後、どうなっていくのでしょうか。自然相手の農漁業、いろいろと考えさせられますね。
例年のこの時期は、野菜が少ないのは当然ですが、暑さに比較的強いナスやオクラはどうにか収穫ができていました。しかし、今年は高温の影響なのか、極端に実をつけにくく、思うような収穫ができません。そこへ、追い討ちをかけるように、攻撃をしかけてくる厄介な害虫がいます。
オクラは「フタトガリコヤガ」。ヤガ科に属する蛾(が)。幼齢~中齢幼虫は淡い緑色。終齢幼虫は鮮緑色の地色に黄色いラインが背中に入り、黒い斑点があります。葉脈も残らないほど葉を食べることもあり、体長約40ミリまで成長します。
野菜ではオクラにつきやすく、葉だけでなく、新芽や果実も食害してしまいます。大量発生はしにくいのですが、1匹あたりの食害量は半端じゃありません。普段は、葉を巻き込み、中に隠れています。
春から秋にかけて年2回程度の発生周期があり、土の中で、さなぎとなって越冬し、5~6月と8~9月に成虫(約40ミリの大型の蛾)が飛び、7月と10月に幼虫の被害が拡大していきます。発生しやすい植物は、オクラ、フヨウ、ムクゲ、ハイビスカス、タチアオイなどのアオイ科植物です。
終齢幼虫は目立つので見つけ次第、捕獲・退治することです。対処剤はアファーム乳剤2000倍希釈散布が有効です。
次はナス。「うちのナスの葉がかすり状になって白うなってくさ、茎のところにえばり(糸)の張って、いっちょん元気のなかとです」とベテランの生産者からの相談。
原因はハダニの種類で「ナミハダニ」、または「カンザワハダニ」と思われます。
ハダニは足が8本あることから、昆虫ではなくクモの仲間に分類され、クモの巣状の網をかける習性があります。非常に小さく、体長は0・5ミリ前後で、肉眼の識別は困難です。
ハダニは、1回の産卵数が100~150個と非常に多く、短期間(約10日間)で世代交代をして繁殖を繰り返していきます。卵は球形で、産卵直後は透明に近い色をしていますが、ふ化が近づくにつれて赤味を帯びてきます。
気温が10度前後になると発育が始まり、25度以上になる7~8月の高温乾燥条件化で、爆発的に増加します。特に高温を好むナスは標的となり、被害が拡大し、収量が極端に落ちるだけでなく、品質も悪化します。
被害の初期症状は葉に白い斑点状の吸汁痕(かすり状)が現われ、被害が進むと緑色を失い褐色となり早期に落葉していきます。葉が枯死してくると、新しい葉に次々と移動し、放っておくと、株全体がしおれてしまいます。
対処はヤシ油などを原料とした粘性素材でハダニの呼吸を阻害する散布剤は有機的に対応ができます。しかし、旺盛な繁殖力を抑制するのは、研究を重ねて多くの作物に利用できる先ほどの「アファーム乳剤」2000倍希釈液散布をおすすめします。
気温35度を超える猛暑。人は暑いとダウンしますが、害虫は逆に勢力を拡大しています。難害虫といえども、その生命力には驚かされます。皆さんの観察力を引き上げ、できる限りの早期予防策をとることが、たくさん収穫できる手立てとも言えるでしょう。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
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