コラム まち角

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 落ち葉が積もる季節になった。自宅前の街路を掃くたびに、思うのは「きれいにしておかないと、世間体がよくない」。気遣いばかりしている自分がいるが、ウオーキングをしている人が通りかかると「気持ちよく歩いてもらえている」と、うれしくなる▼車を走らせていると、ごみ袋を手に、ごみ拾いをしているボランティアを見かける。感謝の気持ちがこみあげ、運転席で思わず頭を下げる。世間体を気にしての落ち葉かきとは、違う次元の思いがあるのだと感じている。ひたすら路面を見つめ歩みを進めるボランティアの姿を見ていると「利他」という言葉が思い浮かぶ▼生きる姿勢にかかわる奥の深い言葉。さまざまな人が、この言葉についていろんな受け止め方をし、実践しているのではないかと思い、ネットで調べてみた。目に留まったのがウェブ雑誌の連載「利他的であること」。著者は南アジア地域の研究者中島岳志さん。ユニークなのが「利他」をヒンディー語(インドの言葉)の文法「与格構文」を使い、とらえようとしていることだ▼「私はうれしい」と言うとき、ヒンディー語では「私にうれしさが留まっている」という言い方をする。「~に」で始まるのが与格構文だが、この構文を使用するのは自分の行為や感情が不可抗力によって作動する場合だという▼「私はごみを拾う」。不可抗力ではなく自身の意思による行為だが、あえて「利他」の心を重ね、こんな言葉で表現してみた。「私に、みんなが気持ちよく過ごせるようごみを拾いたいという思いがやってきて留まっている」。みんなに、そして自分自身にも幸せを感じさせる。それが「利他」であろう。

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1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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