【声の野鳥だより】35

さまざまな漢字で表され/ホトトギス

野鳥愛好家の國友靖彦さん撮影

 カッコウ目カッコウ科で体長27・5センチ。初夏にわが国に渡って来る数多くの鳥の中で、人気があるオオルリやコマドリと比べても、さらに多くの日本人に親しまれている野鳥ではないでしょうか。

 平安時代にはもうホトトギスの名で呼ばれていたようですが、名前の由来は鳴き声の「ホットトトキキ」に鳥を表す接尾語の「ス」がついてホトトギスとなったと言われています。低山からやや高い山地まで初夏の山でよく鳴き声が聞かれますが、時には夜間に街なかの空を鳴きながら飛ぶこともあるので、ホトトギスの声をご存知の方は多いと思います。

 唱歌でも歌われ「卯の花の匂う垣根に ホトトギス早も来鳴きて 忍び音もらす 夏は来ぬ」が有名ですね。ホトトギスもほかのカッコウ科の鳥と同じく托卵といって、他の小鳥の巣に卵を産みつけて育てさせ、子孫を増やす手法をとります。ホトトギスはウグイスにのみ托卵します。

 また、特筆すべきことですが、ホトトギスには当てる漢字が多くあります。杜鵑、杜宇、蜀魂、不如帰、時鳥、子規、沓手鳥などなど。はじめの四つは中国の伝説から来たものです。このうち不如帰は、中国の古い伝説で、蜀の為政者だった杜宇がその座を追われ、地方を遍歴する中で「帰りたい(不如帰)」と悲痛な思いを叫んだとされる話がホトトギスの名になったとされます。

 俳人の正岡子規は「鳴いて血を吐く」と表現されるホトトギスと、結核を患った自身を重ね、俳号としました。最後に私の好きな俳句です。「谺(こだま)して 山ほととぎす ほしいまま」(杉田久女)

ホトトギスの鳴き声

 (野鳥録音家・田中良介)

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