コラム まち角

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 ウクライナ、そしてパレスチナ自治区ガザで今起きている惨状。がれきの中で泣き叫ぶ人々を伝えるニュースを見る度、ただただ、心の中で手を合わせる。悲しい世界に向け、どうにか平和になってほしいと祈ることしかできない自分がいる。ただ、その悲しみから決して目をそらしはしない。そらしてしまえば、それこそ悲しい自分になってしまうからだ▼昭和史研究第一人者の作家、半藤一利さんの遺作「戦争というもの」を紐解く。日本人の兵士、軍属の戦死240万人、民間人70万人以上が死んだ太平洋戦争。半藤さんは、犠牲者が今もなお語りかけてくるのは「戦争が悲惨、残酷、非人間的であるということ」だと説く。そして、非人間的な戦争下、わずかに発せられた教訓が読み取れる言葉を取り上げる▼その一つ。「しかしー 捕虜にはなるな」。4人に1人の県民が死亡したとされる凄惨を極めた沖縄戦。この戦いの末期、沖縄ひめゆり学徒隊の隊長は、野戦病院で看護師として尽くしていた女子生徒たちに軍から届いた解散命令を伝えた。そして、女子生徒たちに、米軍の砲弾がさく裂する戦線を突破し、日本軍が抗戦を続ける方面へ向かうよう訓示した▼生徒に生き残れと言い聞かせながらも、隊長が最後に付け加えたのは矛盾ともいえる「捕虜にはなるな」。捕虜になると、何をされるか分からないとの流言が飛び交い、非戦闘員は信じ込まされていたという▼ミサイル攻撃で崩れ落ちた建物の下で、全身を震わせるウクライナと、ガザの人々。涙は凍り、涙は乾く…。この悲しみに、世界の一人一人が寄り添っていく。それは必ず大きなうねりとなっていく。非人間的な戦いを終わらせるための。

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1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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