特選本鰆
日本国内で有数のサワラの産地である福岡県。糸島漁協がブランド魚として出荷しているのが「特鮮本鰆(ほんざわら)」だ。10年前から鮮度抜群の品質を保つための取り組みを行い、今では海外にも輸出される高級食材として人気が高まっている。
シーズンは、脂(あぶら)のりが良くなる11~3月。一本釣りの大型サワラをすぐに活き締め、血抜きをし、海水氷に6時間以上漬けるなど、厳しい取り扱いマニュアルがある。高鮮度処理により身の締まりが良く、炙(あぶ)りで食べると、ほどよい甘みのある脂が口に広がる。
ただ、かつてサワラは安い価格で取引されていたこともある。「サワラはこの辺で昔からたくさんとれていたけど、身がやわく青臭いとあまり人気がなかった」と話す、鹿毛(かげ)俊作業務課長(50)。身が固く締まったブリのような食感を好む福岡で、サワラの評価は高くなかった。
そこで目を付けたのが、国内最大のサワラの消費地である岡山県。当時、岡山市場を視察した松隈徹船越支所長(43)は「日本各地からサワラが集まる岡山で売れるためには、ブランド化する必要があった」。現地で学んだ処理技術をふまえ、品質が良く新鮮さが売りの特鮮本鰆を岡山で販売。ブランド魚として知名度を上げた。
福岡でも多くの人においしさを知ってもらおうと、県や市、飲食店と提携して、毎年「さわらフェア」を開催(本年度は11月11日~12月10日)。フェア参加店の一つ「プティール倶楽部伊都国」では、特鮮本鰆の白ワイン蒸しを提供した。「脂乗りが一般的なサワラと全く違う。素材自体にうま味がある」と、シェフの小島浩平さん(46)は高く評価する。
今は福岡魚市場や地元商社に卸され、市場価格(1キロあたり)は、一般的なサワラより200~300円高く、平均で2000円以上。香港やマレーシアにも輸出され、富裕層を中心に人気があるという。
「ブランド化は、継続が大事。漁師や仲買、飲食店など、多くの協力のおかげでここまで来た」という鹿毛さん。「これからもさらに認知度を上げて、糸島の人にいつでも食べてもらえる、身近な魚になっていけば」と願う。