カキの新養殖法に挑戦中

志摩岐志の古藤さん 波のゆりかご活用

 「ころっとしていてかわいいんすよ」。自分で育てるカキを1粒1粒手に取り、優しいまなざしを向ける糸島市志摩岐志の漁師、古藤海星さん(21)。2月23、24日に東京の豊洲市場で行われた第1回牡蠣(かき)-1グランプリに、手塩にかけて育てたカキ「海王」を携え出場した。生食部門には32地域から出品があり、グランプリは逃したものの優秀賞を受賞した。

手塩にかけたカキを見せてくれる古藤さん

 同グランプリは、カキのおいしさを競い、カキへの思いや課題を共有するため全国牡蠣協議会が初開催。全国のカキ養殖の猛者たちと交流を深めた。審査員を務めた東京銀座のオイスターバー経営者から「うちに出してほしい」と声もかけられた。

 岐志漁港でカキ小屋のぶりんを経営する両親は、ホタテの殻にカキの稚貝を付け、海中に垂下して自然に育てる下垂式で養殖をする。

 両親を手伝う海星さんは2年前から、下垂式とは別の方法で幅約50センチの筒状のバスケットの中に稚貝をバラバラに入れて海面に浮かべ、波のゆりかごで育てるシングルシード方式に挑戦している。最初は小さな目のバスケットに入れ、成長に合わせて網の目が大きいものに入れ替えていく。藻などがついて目詰まりを起こさないよう定期的に引き揚げて洗う作業も加わる。手間暇がかかるが「小さい時もかわいいし、だんだん大きくなっていく様子を見てもかわいいんすよね」と作業も苦にならない。

 カキは海中で口を開けて海水を吸い込み、植物性プランクトンなどのエサを食べ、海中から出ると口を閉める。海中にいる期間が長い下垂式と異なり、同方式では貝柱が鍛えられ「アスリートみたいなもの」に。波に揺られて殻同士がこすれるため、丸みを帯びた殻は、きめ細かくヒダが重なりなめらかな触り心地。小ぶりながらも立体的で、身は口いっぱいになるほど食べ応えがある。

コロンと立体的で食べ応えのある海王

 漁師の家庭で育ったものの、子ども時代は家業に興味はなかった。なんとなく両親を手伝っているうちにその魅力にハマり、今ではすっかりカキのとりこに。「年中カキを楽しめるよう新品種の養殖もすすめ、いずれはオイスターバーもやりたい」。始まったばかりの挑戦の数々に本人も見守る両親もワクワクしている。

海王はカキ小屋のぶりんで提供
販売(5個1650円)。3月末まで。
問い合わせ=同 090(7383)9558。

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この記事を書いた人

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