アブラムシの襲撃
近年の5月と言えば、日中では、真夏顔負けの気温となっていますね。ただ、夏にはない朝晩の涼しさがあるという違いがあり、私たちにとっては心地よさを与えてくれます。
これは皆さんが植え付けた野菜苗もいっしょ。日中の暑さにぐっと耐え、朝晩の冷え込みはストレスから解放され、生育を促してくれます。
苗を植えてから、比較的早く実がつく、キュウリにとっても実をつけるという、大きな負荷は生育に影響を及ぼしますが、この寒暖差は生育促進と休憩を与えてくれるので、味もよくなってきます。自然の力はありがたいですね。
ところが、手放しで喜んではいけません。逆にこの寒暖差を利用して、植物に寄生する厄介な害虫が襲撃してきます。
それは、アブラムシ類。一般的にアブラムシといっても種類はたいへん多く、日本では名前の付いている種類だけでなんと700種以上いると言われています。特定の植物にしか寄生しない種類や多くの植物に寄生する種類などがおり、どの植物にも数種類のアブラムシが寄生します。体長は2~4ミリ程度の種類が多く、体色は濃緑、淡緑、赤、黒、茶、黄色などさまざまです=写真。
春から秋までは雌だけで繁殖(単為生殖)して世代交代を繰り返します。1匹の寄生では見すごしがちで、群棲した状態で目につきます。アブラムシは非常に繁殖力の旺盛な虫で、成虫は条件が良いと毎日数匹から十数匹の雌の子どもを産み、子どもは10日前後で親になって雌だけで子どもを産み続けるからです。
春と秋に目立ち、夏にはあまり見かけないのは暑さに弱いためで、初夏頃に翅(はね)のあるアブラムシが生まれて移動します。秋になると戻ってきて繁殖を繰り返しますが、雄が生まれて交尾をして卵の状態で越冬します。梅の若い枝や植木のマキの葉、ピーマンにキャベツ、レタスなどに発生します。
そこで対処法
【有機的に抑えることができる処方】
原料がでんぷんやヤシ油などの粘性の素材を散布することで、アブラムシの気門を封鎖し対処する方法。例えば「粘着くん」や「ムシラップ」などを100~500倍希釈液で散布。
【きちっと抑える処方】
「アクタラ顆粒水溶剤」を2,000~3,000倍希釈し、散布(作物ごとに希釈倍率をご確認の上ご使用ください)。優れた浸透移行性により、作物の隅々まで行き渡る予防効果が期待されます。
夏に弱いアブラムシ。この時期は、アブラムシの発生を抑えることが、園芸のポイントと言えます。しっかり観察して、発生予防に努めましょう。
(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)
※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。