福祉会MUKA プラごみ粉砕機導入
糸島の宝 白砂青松 次世代へつなぐ
30日から6月9日までは春の海ごみゼロウィーク。日本財団と環境省が推奨する海洋ごみ削減に向けた全国一斉の清掃活動強化期間だ。
海洋ごみの約8割は陸地から流れ込んだものとされる。普段の生活から生み出されるごみが、適切に処理されなかったり、ポイ捨てされたりすると、川や海岸から海に入り込み海洋ごみとなる。その大半は分解されにくく、自然に還るのに数百年以上かかるプラスチックごみ。海を漂うプラスチックごみは、海洋生物を傷つけ、命を奪い、波や風の力で細かく砕かれてマイクロプラスチックになると、食物連鎖で自然界を循環し人体にも影響を与える可能性が指摘される。
糸島市や福岡市西区の各地では、地域住民やサーファーなどが海岸清掃に取り組み、白砂青松を維持する活動が活発に行われている。
糸島市志摩久家にある社会福祉法人香月福祉会MUKAでは、昨年秋に、海岸で集めた海洋プラスチックごみを数ミリサイズの粒子に粉砕する機械を導入した。プラスチックごみを粉砕したものは、神奈川県横浜市のプラスチック素材を扱う「テクノラボ」に発送する。同社の一部門BUOY(ブイ)では「ビーチクリーンなどで集まったプラスチックごみを買い取り、長く大切にされる工芸品に生まれ変わらせる」をコンセプトに、コースターやキーフォルダーなどを制作し、ごみの履歴を明記するなど海洋プラスチックの課題を伝える商品にして販売する。
ブイの活動に共感する団体や企業が、九州各地からごみをそのままの状態で送っていることを知った理事長の岡崎義則さん(69)は「地元で粉砕した状態にまでできれば輸送効率も良くなり無駄も出ない」と同法人の活動の一環として取り組むことを決めた。
集まったプラスチックごみは、付着した汚れや砂などをきれいに洗い流し、色ごとに分別する。粉砕機に入れるため、ノコギリや大型のカッターを使って15センチ角サイズにカットするが「紫外線で劣化したもの、厚手で丈夫なタンク、球形の浮きなど硬さも形状もまちまち」と作業は慎重を要する。「捨てればごみ。生かせば資源となり、製品を通して海洋プラスチックの問題を知るきっかけになる取り組みだが、いずれはこの仕事がなくなることを望む」。
同法人内の打楽器バンド「ビリーブ」では、海で拾ったポリタンクなどを楽器として活用する取り組みも。厚手のポリタンクはマットな音、大型のボトル状の浮きは軽やかな音と、持ちやすい形状と軽さを生かして演奏を盛り上げる。アフリカン太鼓や鍋をたたく音なども加わり、生まれ変わった海洋プラスチックがもう一花咲かせる。