【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》

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 「糸島はすごい。アートの力で、その魅力を世界の人たちに知ってもらいたい」。本紙で4月から毎月1回掲載している風景画連載「糸島八景」を手掛けるアーティスト、大川博さん。今年の年明け早々、東京から糸島の友人を訪ねてきたとき、糸島で出合ったさまざまな光景に、強烈なインパクトを受けた▼糸島の海岸を訪ねると、玄界灘、博多湾、唐津湾と、それぞれに豊かな表情を見せ、脊振山地の峰々は、たおやかに稜線を描く。広大な田園の向こうに、すそ野をのばす可也山の山容は高雅だった。新進気鋭のアーティストの魂が揺さぶられた。「糸島を思うがまま描いてみたい」。中国山水画の好題材となっている湖南省の八つの景勝「瀟湘(しょうしょう)八景」と、糸島の風景を重ね、「糸島八景」シリーズを着想した▼大川さんは、糸島の古代からの歴史にも深く感化を受けた。海辺に立ち、玄界灘の彼方を見つめた時、大陸から人々がやって来て、この地でいち早く稲作を始め、やがて国家が形づくられていく悠久の流れを感じた。「古代史は、邪馬台国がどこにあったのかに注目が集まる。だが、糸島が大陸の玄関口だったという大本の歴史こそが重要なのではないか」▼大川さんの作品は電子ペンを使って描いたデジタルペインティング。一つの光景でも、光の移ろい、季節の流れにより、さまざまに変わっていく。そのさまを複数枚の連作にして創作している。連載では、その1枚を取り上げているが、糸島新聞社のホームページでは連作すべての作品を紹介し、これらを動画にした作品もBGMと共に鑑賞できる▼連作には、深遠な世界へと誘う物語がある。今週号に載っている「白糸の滝」。大川さんは、流れ落ちる瀑布(ばくふ)とともに、階段状にそそり立つ岩々に着目した。滝の中に、仏様がおられるのではないかー。岩々をじっと見つめると、そう感じられるのである。

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