NHKの連続テレビ小説「おむすび」の舞台の一つ、糸島市は白砂青松の海岸が広がる地として知られる。市内で写真館を営み、海岸沿いの志摩芥屋で暮らす渡邊精二さんのお気に入りは、海に溶けるように沈む、幣(にぎ)の浜の夕日だ。一定の条件が重なると、海面と雲に夕日が反射し、辺り一面燃えるように赤くなる。その神秘的な光景は、何度見ても息をのむ美しさだ。
糸島の自然にひかれ、東京から移住した渡邊さん。実際に生活すると、豊かな環境の裏には地元の人々の努力があることを痛感した。大切に守られてきた自然を子どもたちに残したいと、松枯れの浜を再生する「里浜つなぎ隊」やビーチクリーンなどにも積極的に関わり、地域の人と共に汗をかく。
「当たり前のようにある風景は、そこに暮らす人たちが一生懸命守ってきたもの。ごみを捨てない、清掃ボランティアに興味を持つなど、ちょっとしたことで良いので、一人一人が自分ごととして考えれば、幸せな未来をつくれるのでは」。渡邊さんは穏やかな表情で話した。
(地域特派員・廣瀬恵子)