アーティスト 大川 博
山に降り注いだ雨水が岩間に染み入り、やがては濾過(ろか)され、岩清水となり流れていく。そんな岩清水が岩の表を滑るように流れていく。岩は水により、水は岩により、独特の表情をつくり上げ、「岩水一如」というべき光景となる。
光と水の移ろいゆく白糸の滝を描きあげた。春はあけぼの。バラ色の空のもと朝霧の向こうに滝は流れ落ちる。桜も散り、水の上には花筏(はないかだ)が魅せてくれる。
春が過ぎ、緑萌える山々。梅雨の時期、水の気が漂う白糸の滝周辺は一面、紫陽花に彩られる。
山霧に覆われ、色彩は白と黒だけの世界。洗い流すかのような驟雨(しゅうう)。雨後、日が差し、滝は明るさを取り戻す。太陽は沈み、コントラストが際立ちはじめる夕照の時。一日は終わり、夜を迎え、三日月が山の上に。
水は豊穣をもたらすと同時に災いをもたらす。古来、日本人は自然の玄妙さに畏れを抱き、そして敬い暮らしてきた。そんな水の源こそが白糸の滝であり、玄妙さを感じさせる地である。「岩水一如」の白糸の滝は、千変万化の心を映し出す鏡。心静かに滝と向き合うと、心の中にすむなにものかが見えてくるような気がする。
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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