水口さん遺作展
縦194センチ、横162センチの人間の背丈を超すほどのキャンバスに描かれた海洋プラスチックごみに囲まれたウミガメが、人間を静かにじっと見つめる-。地球環境を汚すごみ問題を中心に、見る人に問いかける作品を数々生み出した糸島の画家水口政夫さんの遺作展が、糸島市前原東の伊都郷土美術館で開かれている。
1997年に同市志摩芥屋に移住し、60歳から絵画制作に打ち込み、県美術協会会員として数々の実績を残した水口さんの作品が並ぶ。
美しい海辺に散乱するごみを「見るに見かねて作品にして訴えた」というウミガメを題材にした作品をはじめ、自転車でどこへでも出かけて描いた糸島の風景画なども展示する。取り壊される前の芥屋国民宿舎(99年)、まだ薄暗い早朝に開かれた志摩の朝市の賑わい(00年)、芥屋の海水浴場で毎年行われるサンセットライブの様子(14年)など、さまざまな題材を水彩画、油彩画など多様なタッチで描いた。
20年に急逝した翌年から福岡市美術館をはじめ県内外で妻の瞳さんが個展を開いてきた。幣(にぎ)の浜に不法入国の船が打ち捨てられた時も「真冬の海でも寒風の中描いていた」と政夫さんの画家魂を振り返る。
3枚に渡るキャンバスに描かれた立石山山頂からの風景を「自分が開く個展はこれで最後。この絵はどこかに落ち着く先がみつかればと思う」と見つめた。