和牛の「枝肉共励会」肉質を競う
飼育取り組みの成果発表へ
「和牛甲子園」。和牛を飼育する全国の農業高校が参加する同甲子園(全農主催)では、高校球児ならぬ高校牛児(ぎゅうじ)たちが、和牛飼育の取り組みを発表し、その成果としての枝肉の肉質を競い合う。
糸島市の糸島農業高校の動植物活用科では、授業の一環で繁殖牛5頭、肥育牛2頭を飼育している。肥育牛の1頭で「けんじ」と名付けられた雄は、来年の第8回同甲子園の肉質を審査する「枝肉共励会」に出される予定だ。
けんじは、2023年7月に生後9カ月、体重約300キロで同高にやってきた。同科の動物活用コースに所属する28人が餌やりや牛舎の掃除などの世話を担う。現在は約600キロと順調に成育する。来年1月には、800キロ目標に立派な博多和牛として育て上げる予定だ。
同高は、全農グループ福岡畜産協議会より支援を受け、昨年から肥育牛を導入した。今年1月に行われた同甲子園に初参加し、飼育管理の創意工夫を発表する「体験発表会」で、高校所有水田で収穫した後の稲わらなどを有効活用し、低コストで持続可能な畜産の実現について発表した。牛舎の敷料をよりふわふわにし、水分を吸収させるため、もみ殻に加え、竹を粉砕した竹チップを混ぜることを検討。敷料と牛ふんが良質な堆肥になることを前提に、素材の配合割合などを引き続き研究する。
枝肉共励会に初挑戦する3年の森内まおさん、向井優希さん、津田舞香さんは、まめに牛舎に通い「今日は水の飲み方が少ないな」「体温が高いかな」と体調の変化を確認する。「太ってくると自力でかきたいところをかけなくなるので」。巨体となったけんじに臆することなく、首筋や背中と丁寧にブラシをかけ、「よく食べてよく寝られるよう」環境を整える。「触り心地がいいし、飛び跳ねて喜ぶこともありとてもかわいいです」と笑顔だが「打ち身などになったら肉の質が下がるので、ケガとかさせないよう細心の注意を払います」と上質な肉を育て上げる心構えは万全だ。
同科主任の河原治子教諭(30)は「動物関係の分野に進もうとする生徒たちにとって、『毎日世話をするのが当たり前』ということを理解するいい機会。しゃべらない動物の感情を読み取る力は日々の世話で培われる。どの分野にいっても役に立つ力」と挑戦を後押しする。
「和牛肥育を体験できる貴重な機会」と同甲子園に向けて準備をする3人。来年1月に枝肉となるけんじを愛情を込めて世話をするが「かわいがるだけじゃない。おいしいお肉になるためにみんなで育てているので、最後まで責任を持って向き合いたい」。農学系女子「ノケジョ」の瞳は輝く。