【糸島市】羽根飾りある弥生の木製鎧

全国2例目、深江石町遺跡で出土

10月14日まで 伊都国歴史博物館で公開

 糸島市文化課は7月25日、同市二丈深江の深江石町遺跡から、木をくりぬいた弥生時代後期前半(紀元前1世紀)の鎧(よろい)「木甲」が見つかったと発表した。木甲は製作途中だが、後胴1枚と前胴2枚のセットで、後胴に羽根を模したと思われる装飾がある。同課は「武人と司祭(シャーマン)の役割を併せ持つ統率者がいたのではないか。木甲が全てそろって出ることは非常に珍しく、構造と製作手順が分かる貴重な資料」と注目している。

木甲の後胴(右手前)、前胴右(同中央)、前胴左(同奥)と残材2点(左)

 木甲は、2022年度の宅地開発に伴う同遺跡の発掘調査で、3号土坑(最大径約4メートル、深さ46センチ)から出土。土坑からは常に水が湧き出す状態で、発掘を担当した同課の江崎靖隆主幹は「木甲を製作する際、水漬けと乾燥を繰り返しながら削っていくため、この場所を選んだのではないか」と説明する。

 木甲の後胴(羽根を含む長さ39.8センチ、幅32.6センチ、厚さ1.8~5センチ)と右前胴(長さ46.5センチ、幅27.7センチ、厚さ5.5~10.5センチ)、左前胴(長さ47.5センチ、幅28センチ、厚さ最大6.6センチ)は、全て一本のカキノキ属の木を使い、後胴などを切り出した後に残った材も2点見つかっている。

羽根の装飾がある木甲の復元図=糸島市文化課提供

 弥生時代の木甲は全国で17例、うちくりぬき式は8例しか出土がない。削り出しで表現された羽根の装飾があるものは、静岡県浜松市の伊場遺跡に続いて2例目。深江石町遺跡のほかの土坑からは、横杓子(よこじゃくし)などの木製品も出ており、同課は「木工集団がいたことも考えられる」としている。

 弥生時代後期前半は、伊都国に権力が集中する時期であり、中国の歴史書「魏志倭人伝」にある「倭国大乱」の前夜でもある。

 伊都国の東の玄関口とされる今宿五郎江遺跡(福岡市西区今宿)でも、弥生時代後期後半の木甲が出土している。今回、西の玄関口とされる深江石町遺跡でも見つかったことで、同課は「ある程度、戦に備える意味合いがあったのかもしれない」としながら、「しかし、伊都国の遺跡で戦の痕跡がほぼなく、一方で宗教色の強い銅鏡が伊都国に集中していることから、武力衝突だけでなく、呪術的な争いもあった可能性が考えられる」と一石を投じた。

 木甲は保存処理が終了し、10月14日まで糸島市の伊都国歴史博物館で公開する。

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