【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.82(7/26号掲載)

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冬至カボチャ育苗開始の適期

 「猛暑、熱帯夜、夕立も降らん、扇風機の風はぬっか(冷たくない)」「朝はよう(早朝)仕事しても、いっときやん。午前10時はもう作業止めんと、熱中症になるばい。逆に夕方はいつまんでも(いつまでも)暑かけん、仕事になりまっせんばい」

 そうですね。50年前の夏は、木陰にいると爽やかな風が吹いていたし、夕立が降ると、庭先が気化熱で冷えて、気持ちよかったのを覚えています。エアコンなどもそんなに普及しておらず、自然の風だけでも、夏は過ごせていました。緑ある山々もヒートアイランド化しているのでしょうね。

 とは言っても、この時期になると、もう秋冬野菜の栽培準備が進みます。キャベツ、芽キャベツ、ブロッコリー、葉ボタンなどの苗作り。ニンジンの種まき、超極早生タマネギの種まき、ハクサイの育苗、秋バレイショやニンニク球の植え付けなど。暑いと言っても農園芸作業は待ったなし。] そこで、ちょっとおすすめなのが、「冬至カボチャ」栽培。最近は、カボチャの品種もいろいろと増え、初霜が感じられる11月下旬くらいの収穫目安でしたら、夏まきの今が育苗開始適期。まず品種は、栗みたいなホクホクした食感が人気の「栗系」カボチャ。甘味が強く、粉質が高いので品質の低下が遅く、収穫後の日もちが良いのが、魅力です。

 まずは、種まき。7・5センチ(2・5寸)の小さめのポットに種を巻きます。この時期は地温が上がるので、直射日光は避け、比較的明るく涼しい場所で管理してください。おおむね3日前後で発芽。双葉の後、本葉2枚未満が定植適期の苗です。約10~14日くらいでしょう。

冬至カボチャはポットで育苗すると発芽も安定し良い苗が育ちます
定植は、苗の双葉後の本葉が2枚半頃が植え時です

 畑作りのポイントは、生育初期の気温が高く、草勢がつきやすいので、春作に比べて、基肥を抑え、草勢を落ち着かせた生育に心がけることです。でないと、葉茎ばかり繁茂となり、着果が安定しません。リン酸が比較的高い配合肥料、例えばチッソ8-リン酸10-カリ8と表記されていれば、1坪当たり300グラム与えてください。石灰肥料も1坪当たり350グラム目安の施肥がよろしいでしょう。

 よく混ぜ合わせた土に、いよいよ定植です。根に活力がある本葉2枚の苗を暑さが和らぐ午後3時以降に、根鉢を崩さないように定植します。カボチャを含めたキュウリなどのウリ科野菜は、傷めた根の再生力が弱いので、根を傷めないことがポイントです。気温が高く水分が蒸散しやすい時期なので、定植後もしっかり、土壌に水分を補給してください。

本葉は4枚半頃、主枝の先端を摘芯し、子ヅルを伸ばす

 その時に市販の有機液肥(エコアースジュニア)など300倍希釈目安のものなどを定植直後補給することで、根痛みの復元にも寄与します。定植後の管理などは、随時掲載いたします。冬至カボチャは日中の寒暖差もあり、甘味抜群です。

冬至カボチャは手の平にのるくらいの小型の姫系はたくさん収穫できます

 種からの育苗、定植、管理、収穫と一貫した栽培の魅力。1年で一番暑い7月下旬にまいて、冬の寒い11月の収穫。収穫の時には、あの暑い日が昔のように思えるでしょう。野菜作りには、物があふれ、便利でデジタル化している現代に、季節を体感できる素晴らしさがあります。

 土と風、緑などアナログ的ですが、ゆっくりと時が進みそうです。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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