二十四節気の一つ、処暑となり、暑さがもっと落ち着いてくれたらと願うのだが、この夏は酷暑と言っていいありさま。休日の昼間、いつもは日暮れに行っている自宅の鉢植えへの水やりを昼間にしてみた。涼を求め、打ち水をしたつもりだったが、鉢が並ぶコンクリートの床に水がかかると、湯気が沸き、辺りは蒸し風呂のようだった▼江戸時代には、夏の風物詩として日常的に行われていたという打ち水。調べると、やり方にはコツがあるのだそうだ。ウェブで公開されている環境省の広報誌「エコジン」で、ポイントを紹介している。これによると、打ち水をする時間帯は朝や夕方。日差しが弱い時間帯に、水をまくことで、水を地面に長く保たせ、涼しさが続くようになるという▼もう一つのポイントは、日なたよりも日陰にまくこと。日陰のない庭やベランダなどには、すだれや、アサガオなどのグリーンカーテンを設けると効果が高まるという。ぜひ、打ち水に再チャレンジしてみようと思う▼昔は夜の外気を取り込む家電があった。エアコンが普及する前の1970年代、ウインドファンという換気扇のような機器を、家の窓に取り付けていたのを覚えている昭和世代の人も多いだろう。子どもの頃、山あいにある親戚の家で、その風を浴びた時、外気を流し入れているだけなのに、エアコンのような冷たさを感じ、風呂上がりはファンの前で涼んだものだ▼打ち水をうまく利用した建物として、京都の町屋がよく取り上げられる。盆地で厳しい暑さに見舞われる京都の町屋では、家の奥に坪庭を設け、そこに打ち水をする。室内のふすまや障子は外されており、部屋部屋に風が流れていく。まさに、風流という言葉がしっくりとくる。ただ、近年の猛暑を乗り切るには、部屋を閉ざしてエアコンに頼らざるを得ない状況だ。風流な夏の過ごし方は、古き良き時代の遺風となってしまうのか。猛暑に考えさせられることは多い。
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