江上農家の実験と工夫
およそ1万2,000のイチゴ苗が並ぶ糸島市志摩小富士の江上農園は7年前、当時食品関連の会社で働いていた江上茂隆さん(69)の「自分がしたことの責任を自分で負える仕事がしたい」という思いからスタート。福岡市中央区から糸島に移り住む際に農地を譲ってくれたイチゴ農家を引き継ぐかたちで、妻京子さん、息子で糸島農業高出身の拓郎さんの3人でイチゴ栽培と加工を営む。
はじめは苗を置く台の高さも試行錯誤してちょうど良いものにたどり着いた。「孫たちが畑でそのまま採ってそのまま食べてもいいように」と、必要のない処理はできるだけしないように安全にもこだわる。緑のキャップに赤い果肉が透けて見える瓶が印象的なイチゴジャムは、果肉を感じられるようイチゴを角切りにして入れた。
苗の横の畑には、畝と畝の間に水をためてある。茂隆さんの工夫で、「10年前にタイでプールのような畑を見て、桶の船に人が乗って畝の間を移動してたのを思い出して。暑い土地で水が枯れないための工夫かなと。この土地でうまくいくか実験中です」と楽しそうに話す。
農園の土に合うイチゴ以外の作物も試行錯誤中。風が強く当たるため、表面に傷がつきやすいナスは他の野菜の葉で防風するように植えることで、ツヤのあるきれいなナスができているそうだ。
農園を始めて「『これだけで満足できるな』と思えるくらい野菜をおいしいと思うようになった」という茂隆さん。「丁寧に手をかけた分かえってくる」農業を、これからも実験や工夫を繰り返して続けていく。