【糸島市】サンセットファイナル[中]

「BEACH STORE」代表
サンセットライブ設営・警備担当
 深井 隆史さん(50)

ライブの安全、持てる力を全部出し守る

 「ここで立ち止まらないでください」。砂浜に設けられた通路を埋め尽くしたライブの観衆に、スタッフたちはひっきりなしに声を張り上げて協力を呼びかける。多い時には3日間で1万5千人が詰めかけたサンセットライブ。アルコールでほろ酔い気分の客もいる中、会場の内外でトラブルが起きないか常に目を配ってきたのが深井隆史さん(50)だ。

サンセットライブの土台を支え続けた深井さん

 「サンセットライブの守護神」と言われ、ライブの安全を守り続けてきた深井さんの務めは、いよいよ今年最後を迎えようとしている。

 深井さんは、福岡市西区小田にあるサーフショップ「BEACH STORE」の代表。1994年までオーストラリアにいた深井さんが、帰国後初めて入った海が今の店舗前に広がる二見ケ浦だった。近くでビーチカフェサンセットを営み、仲間と一緒にサンセットライブを始めた林憲治さんと知り合い、誘われるままに3回目のライブからスタッフに加わった。

 当初はアーティストの送迎など全般に関わっていたが、年々規模が大きくなり、設営や警備を担当するように。ユンボを使った会場の整地や会場内外の交通ルールの作成など、参加者が安全に楽しめるため「裏方の裏の裏の仕事」までマルチにこなす。

 会場内のフェンスも「自然な空間に溶け込むように」と竹を使い、スタッフたちと汗を流して毎年手作りする。「誰も目が付かないような所までセキュリティを入れることが一番大事。何の評価もされないけど、それでこそ安全が守られる」と語る。

 大変だったのは、会場を芥屋海水浴場に移した2002年。アーティストの熱唱に魅了された観衆で混み合うライブ会場の舞台が増え、人の流れや誘導も変わる。トラブルなく乗り切れるか-。胃が痛くなるほどのプレッシャーだったが「やるしかない」。事前に会場へ何度も足を運び、緻密な計算、シミュレーションを繰り返した。「進化させるっていうのは、それだけの能力と体力が必要になるとものすごく感じた年だった」。

 人生の半分以上をサンセットライブと共に歩んできた。ここまで続けられたのは「林さんの『人間力』が大きい」と話す。「彼は多くの人を寄せ付けて、支えたくなる不思議な魅力をもつ男」。今年でファイナルと聞いても「しっかりやり切ってきた」と、寂しさは一切なかった。

2016年、アーティストやスタッフと写る深井さん。当時は無線機を三つ身につけ、全体を見回っていた

 ただ、特別な思いもある。「事故なくフィナーレを飾れるよう、持てる力を全部出してぶちあたりたい。走りきってしまって初めて、自分にとってサンセットライブがどんなものだったか分かるかもしれない」。いよいよラストスパート。深井さんは表情を引き締めた。

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この記事を書いた人

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